
日本能率協会は、1979年から実施している「当面する企業経営課題に関する調査」について、今回は製造業にフォーカスを当て、経営資源や組織風土、新規事業への取り組み状況等を調査した。全国の製造業7816社の代表者または製造部門責任者を対象に行われ、702社から回答を得た。
現状の課題と対策は
現状やこれから3年の戦略を考える上で考慮すべき点については、「人材不足」が78%、「資材価格高騰」が72%となり、この2つの回答が回答企業の7割超と突出して多かった。特に売上高が低い企業はその傾向が強く、50億円未満の企業群で最も高い割合となった。反対に、売上高500億円以上の企業群では60%台前半だった。さらに「エネルギー価格高騰」も47%と続き、人手不足と価格高騰が直近の対応すべき課題となっている。
上記のような課題に対して解決に向けて取り組んでいる施策については、「DX/AI活⽤推進」が51%、「⾼効率設備や⾃動化の推進」が50%、「従来難しかった工程や作業の自動化革新」が43%、「⼥性・シニア・外国⼈⼈材の登⽤」が38%と続いた。課題に対して設備投資で対応する意向が強く、DXやAI、自動化の投資拡大に期待できる回答となった。
また、グリーンエネルギーやサステナブルな商品の開発に取り組む企業も2割近くに上った。
「選択」と「集中」ができている企業は7割
事業の発展や成長に向けて、製品や事業の「選択と集中」ができているかについて聞くと、「できている」と回答した割合が69%となり、多数の企業が選択と集中ができていると回答。「できていない(していない)理由」については「市場や顧客ニーズの変化に対応できていない」が最も多い51%、次いで「内部スキル(データ分析能力)や意思決定体制に課題がある」が43%、「リソース(予算、人材)の制約により意思決定に必要なデータ分析ができていない」が38%と続いた。
見直し対象となった事業の対処については、「効率化・改善を行い採算性が見込めなくなるまで継続する」が43%、「必要最低限の投資に留め、採算性が見込めなくなるまで事業継続する」が39%となり、事業撤退や譲渡よりも高くなった。売上高500億円以上の企業群では、事業を撤退(39%)、あるいは譲渡する(22%)との回答が大きく上回った。
技術人材の育成、技能伝承の有無が成長のカギに
事業発展・成長に繋がる技術開発の方針、また生産戦略を持っているかについては、いずれも70%以上の企業があると回答。技術を強化する施策のなかで重要度の高いものは「技術・開発人材の育成」(57%)で、生産技術・製造を強化する施策のなかでは「工場全体の革新のための工程編成、設備革新、レイアウト、部品物流等の設計および導入」(38%)、「技術・技能の伝承」(37%)、「生産技術研究・開発(将来新製品に対応した広報、設備、材料等の開発)」が30%が3割台で並んで多かった。
カーボンニュートラルへの課題意識も
また、調査では持続可能性に関する質問も実施し、温室効果ガス削減が課題(問題)になっていると答えた企業、自社活動の環境への影響を考慮すると答えた企業は、共に67%となった。他方、気候変動問題が課題(問題)となっていると答えた企業は全体で58%だったが、売上高500億円以上に限ると89%に達し、企業の規模により大きく差が出た。