FA販売員の基本的な活動と言えば、「①顧客を作る」「②商談を見つける」「③商談を決める」「④継続受注をするための関係構築」の4つの実践である。
昭和のFAマーケットが成長し続けている時には、この4つの活動がバランスよく実践されていた。現状は「③商談を決める」活動が飛び抜けて重要視されている結果、①と②、④の活動に潜む営業力が低下し、それが原因となって持続的成長を妨げているように見える。
「①顧客を作る」の営業力が低下していると認めるFA販売員は多い。一方で、「②商談を見つける」「④継続受注をするための関係構築」の営業能力は十分にあると多くのFA販売員は言う。
②と④の営業力不足を認めないFA販売員には言い分がある。それは、販売店営業は売上を上げるために商談テーマをいかに多く発掘し、エントリーするかという営業活動を実践しており、そのためFA販売員はそれに応えて商談テーマのエントリーに腐心する。だから②の商談を見つける活動は日常的に十分にやっているのだと抗弁する。
しかし、エントリーされる商談テーマは、案件や要件という形で顧客からFA販売員に相談したり、漏らしたりするものが多い。したがって商談テーマを「見つける」のではなく、顧客からFA販売員が「もらっている」ことになる。
昭和の成長期には商品の横展開活動という営業が盛んであった。FAマーケットは現在のように成熟していなかったので、各工場の自動化の様相はバラバラであった。FA販売員は制御機器を使ってある工場のムダをなくすことに成功すると、その事例を各工場に一斉に売り込んだ。このような活動こそが、FA販売員の方から仕掛けてテーマを見つけたことになるのだ。
現在のような成熟したFAマーケットでは、どの工場も同じようなことをやっている。だから横展開活動でテーマを発見する商品がないとFA販売員は言う。しかしそれは言い訳にすぎない。どの工場も同じことをやっている訳ではない。FA販売員は自分が担当している工場のことを知っているつもりになっているだけなのだ。だから、いつも打ち合わせなしで買ってもらっているリミットスイッチやセンサー類でさえ、どこにどんな役割で使用されているのかと質問してもちゃんとした答えは返ってこない。これでは顧客の実態は分からない。FA商品の使用事例をメーカーに教わって顧客に売り込んでも、そのアピール力には迫力がない。売り込む際、相手をその気にさせるための味をつけて語れないのである。やはり商談を見つける営業力は低下している。
「④継続受注をするための関係構築をする」、この営業力はあると強調するFA販売員は圧倒的に多い。その理由の1つは、顧客に案件や要件等の相談事があると1番目に自分へ連絡が入るからと言う。
確かにそうではあるが、1番目に連絡が入るのは販売員の力量以上に販売店への信頼があるからだ。それも長い間、販売店の担当者が作ってきたルートセールスの上に成り立っている。その信頼は商品の継続的な売上を通して出来ている。売上げが少なくなってくるとその顧客への注力度がなくなり、売上はジリ貧になる。顧客自体は隆々と元気であっても、いつしか休眠口座になっている例が多い。このような例は、顧客との関係構築が商品頼りになっていることを物語っている。
それに、新規客から商品の相談が飛び込んで商品が売れたとしても、その新規客から継続して注文がなければ顧客にすることができてないということだ。以上の通り、継続受注のための関係構築は販売員の営業力によるというよりも商品力になっている。
デフレを脱却した令和の成長期には新しいマーケットが確実に生まれる。FA分野でも現在想定されてされるマーケットの需要だけではない。FA営業が見てないし見えてないマーケットの営業需要もある。そこに向かっていくには、いまや弱くなってしまった「①顧客を作る」「②商談を見つける」「④継続受注をするための関係構築」の営業力を復活させる必要があるのだ。
令和の販売員心得 黒川想介 (131)
- 2025年3月13日
- コラム・論説
- 2025年3月12日号, 黒川想介
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