定例ミーティングは技術テーマの進捗確認に加え、技術的な議論を深めることで技術者の普遍的スキルを高め、次に向かって何を行うべきかを決める重要なものになります。
加えてそもそも定例でミーティングを行う目的を意識し、また必要に応じて時間的な制約設定し、緊張感を持たせるという観点も必要です。しかし若手技術者に技術業務の状況を報告させた結果、何を言いたいのかわからないということもあると思います。
若手技術者の言いたいことをリーダーや管理職はもちろん、技術的な議論の主力である中堅技術者が理解できなければ、ミーティングで時間を使う意義が低下します。このような状況を改善するため、リーダーや管理職が若手技術者に出すべき指示について考えます。
若手技術者の技術報告がわかりにくい場合、その場で図示化させることが肝要
結論から先に言うと、「若手技術者に話している内容を図示化させる」ことが重要です。予め用意させるというより、必要に応じてミーティング中、その場で書かせるイメージとなります。
機械系であればグラフ、図形、数式、化学系であれば化学構造や反応式、分析チャート等があります。これらを口頭で説明されても、なかなか内容を理解することは難しいでしょう。
人が目で認識できる情報密度は、動画 > 画像 > 活字です。活字でまとめることは重要であることに変わりありませんが、「画像化という作図作業」により、高い情報密度で話の内容を伝えることが可能となります。
ミーティングに参加している技術者の理解が深まれば深まるほど、技術的な議論が闊達化することが期待されます。
図示化という作業を通じて若手技術者の頭も整理される
若手技術者が図示化という作業を行うことで、もう一つ期待されることがあります。それが、「若手技術者自身の頭の整理」です。図示化しようとすると技術報告書作成時と同様、自らの行った技術業務を俯瞰的に見なくてはいけません。
しかも図示化するとなると、解像度を上げて業務全体を見ることが必然的に求められるため、図示化をすることで新たな発見や、うまく説明できなかったことを図を使って説明できるようになることが期待されます。
ミーティングにおいて若手技術者の頭が整理できれば、上述の技術議論闊達化に加え、当事者である若手技術者が自らの業務をより深く理解するきっかけを得ることができるのです。
まとめ
若手技術者が自身の技術業務報告内容に対して図示化を行うことで、ミーティングの質を上げることに貢献できること、更には本人の頭の整理にもつなげられることを述べました。
ミーティングにおいて、口頭だけの説明では技術的な議論が理解しにくいいうえ、その内容を理解できている技術者間だけで議論が進むという、個人競技や少人数競技のような要素が強くなってしまいます。
活字で情報を共有することはもちろんですが、図示化を積極的に行うことで、技術者のチームプレーをより強固にすることができるでしょう。
【著者】

吉田 州一郎
(よしだ しゅういちろう)
FRP Consultant 株式会社
代表取締役社長
福井大学非常勤講師
FRP(繊維強化プラスチック)を用いた製品の技術的課題解決、該関連業界への参入を検討、ならびに該業界での事業拡大を検討する企業をサポートする技術コンサルティング企業代表。現在も国内外の研究開発最前線で先導、指示するなど、評論家ではない実践力を重視。複数の海外ジャーナルにFull paperを掲載させた高い専門性に裏付けられた技術サポートには定評がある。
https://engineer-development.jp/