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【ワゴジャパン】ビルディングオートメーションに新たな風を吹き込む WAGO Next Sustainable IoT

都市部の再開発や老朽化した設備の更新などで盛り上がりを見せるビルディングオートメーション。IoTやデジタル技術を活用したZEBや省エネへの取り組みは一般的になり、最近ではさらにビルの評価を高めるため、人に優しい快適な環境を提供する「WELLESS」に取り組むケースも出てきています。

ワゴジャパンは、オープンソースでの開発が可能なコントローラおよびコンピュータのラインナップもあり、照明制御の「DALI」に加え、エネルギーハーべスティングを利用した低消費電力無線「EnOcean」などのIoT技術・デジタル技術を活用し、ビルディングオートメーションに新たな風を吹き込もうとしています。ワゴジャパン ソリューションセールス プロダクトマネージメント アシスタントマネージャーの松田慎二氏に話を聞きました。

次世代のWELLESSへ ~建築物に求められるものさしの変化~

ーービルディングオートメーションの最近のトレンドについて

以前から省エネやZEBが注目されていますが、ここ5、6年前頃からビルで働く人々のことを考えたシステム、今でいう「WELLESS」を高めた建物に関心が集まってきています。エネルギー消費を減らした上で、人の健康面に配慮し、人にとっての理想的な空間にいかに近づけていくかということが重視されるようになってきています。

WELLESSを実現するための設備投資にもコストがかかることなので進みはゆっくりですが、それでも少しずつ広がりを感じます。

技術に関しても、ビルディングオートメーションの世界では何十年も前からIoTの技術は採用されて自動化が行われてきました。しかしコスト面の問題もあり、これまでは急激に技術が普及することはありませんでした。それが今、IoTやデジタル技術を積極的に活用して最適な状態を実現しようという形に成熟してきています。

IoTソリューションで快適な空間づくり

ーー建物の進化ですね

当社も数年前からIoT向けに750シリーズのコントローラを提案し、ビルディングオートメーションの分野では照明制御に力を注いでいました。しかし最近は照明制御だけでなく、空調やその他のITシステムとの連携も進めています。

例えば、空調ではすでに大手空調メーカーをはじめ、数社の空調システムとBACnet/IP、MODBUS/TCPによる接続を実現し、実案件にも導入され付加価値の向上に貢献しています。

それ以外にも、ビルの照明や空調制御のシステムと会議室の予約や来客管理システムを連携し、社員がICカードの社員証をタッチしたらその情報をもとに空いている会議室を予約し、時間になるとその部屋の空調や照明を動かして快適な空間にする制御や、使用後には人感センサで全員の退室を確認し、自動で照明の消灯や空調の停止をする機能などに取り組んでいます。

お客様に来社専用のQRコードを発行し、会社の受付でQRコードをカメラにかざしてもらい、面会者にお客様が到着した旨の通知がいくようにするなど、IoTシステムとの連携を試験的に進めたケースもあります。

お客様がビルに求めるオートメーションはそれぞれに異なります。これから先のビルの姿を見せるためにも『こういうことができますよ』という引き出しを数多く持っていることは大切。照明に限らず先進的なIoTソリューションの引き出しを増やしているところです。

ゲートウェイコントローラとしての役目

ーー御社のコントローラの特徴について

空調や照明の制御、ブラインドの開閉、エネルギー消費電力や室内環境のモニタリング、入退室の管理など、IoTでできることは数多くあります。しかし空調は空調の、照明は照明の、それ以外ならそれ以外に別々の通信プロトコルがあり、基本的には建物に導入されている設備には互換性がなく、別々のシステムをつなげるという苦労があります。

従来、それらのシステムを接続しようとするとゲートウェイサーバなどを利用しているケースもありましたが、実現しようとするとコストが膨らみ、予算が厳しいという現実があります。

それに対し当社のコントローラは、さまざまな通信プロトコルの対応が可能であり、MODBUS/TCPは標準装備、BACnet/IPに関しては最初から実装しているコントローラタイプもあり、上位システムや周辺システムとの接続に便利です。

既築ビルに対して、すでにいろんな機器で構成されているネットワークにもゲートウェイとして使用できるケースもあり、新築ビルの場合は設計段階からゲートウェイまたはコントローラとして選定されることも多くなりました。

大抵の場合、はじめはお客様もさまざまな機能を希望しますが、具体的になっていくに従って予算が厳しくなって機能は削られていきます。たとえ初めから実装できたとしても、使用しない機能などが少なからずあります。

導入時は必要最低限の機能を組み込んで、数年後にお客様様からのご希望を確認し、利便性を考慮した機能拡張や単純なデータ収集機能から本格的なモニタリングシステムに切り替えをすることも可能です。それは運用に合わせて柔軟に対応でき、そうした提案を進めています。

EnOceanアライアンスメンバーと協業

ーー御社だけで実現できるものですか?

さらに、お客様がビルに求めているもの、必要な機能を実現できるようにするため、他社とのコラボレーションを強化しています。それが引き出しを増やすということです。特に力を入れているのが、EnOceanのアライアンスメンバーとの協業です。

EnOceanは、エネルギーハーべスティングを利用した低消費電力の無線通信で、ビルや建設業に特化している訳ではありませんが、世界ではビルディングオートメーションには多く使われている技術です。スイッチやセンサ用に別途、電源配線をする必要がなく、最近だと、個室トイレのの在室を検知して表示するものなどにもEnOceanが使われています。

EnOceanアライアンスメンバーは、バッテリレスのスイッチやセンサを使った無線通信技術を活用して、次々と新しい製品を開発している仲間です。今までのビルディングオートメーションとは異なる分野、そして、違う視点での技術活用と仲間の力を借り、既存の建設業界の考え方とは異なるアプローチで、WELLESSの向上、付加価値を高めていきたい思っています。

オープンソース活用で若者のチャレンジにも

ーー外からの刺激も大切ですね

ワゴのコントローラはLinux環境によるオープンソースでの開発が可能であり、Node-REDやPythonでプログラミングができます。こうしたオープンソースを使うことによって、将来の若い世代が活躍できる環境づくりも意識しています。

また当社のプログラミングツールは、国際標準規格 IEC61131-3に準拠したCodesysを採用していますので、誰でも覚えてプログラミングが可能です。大学の建築学科というと、どちらかというと建屋の構造の話になりがちですが、大学時代から国際標準規格のツール使用し新しい技術でどんな快適なビルを作るかを若い人に考えてもらったら、面白いものを考えつくのではないかと思ったりもします。

ビルディングオートメーションも次の時代へ ~Connected IoT Solution~

ーー今後に向けて

ZEBとWELLESSに向けたビルディングオートメーションへの取り組みは、空調や照明の制御からはじまり、ブラインドの開閉制御などへと範囲を広げ、設備メーカーと連携して進めています。ブラインドの制御はあまり目立ちませんが、照明制御と連携し室内の明るさを制御し且つ空調制御と連携し室内の空気調和によりの省エネにもつながる重要なものです。

一方で、「ZEBとWELLESSを実現するにはワゴのコントローラが一番便利である」という認知が低く、それをもっと広げていかなければいけません。今後は、ワゴのコントローラで何ができ、どんなことが可能になるのかということを具体的にアピールしていこうと思っています。今は、さまざまなメーカーと共同開発を通じて技術は蓄積できている状態。これからはそこで得た技術やソリューションをお客様に向けて建設的な提案を進めていきます。

https://www.wago.co.jp