製造業・FA各社の経営戦略と取り組み、最新技術・製品情報を各社キーマンに聞く

【国際電業】新たな挑戦へ─女性社長が見据える未来

「ものづくり王国」と言われる愛知県ですが、技術先行型のメーカーが多く、女性社長の数は少ない傾向にあります。こうした中で、ニッチな分野で圧倒的なシェアを誇るFA部品、空調ダクト用自動切断システムメーカーの国際電業では、初めての女性社長が4月1日に就任しました。就任までの経緯、抱負などについて古川朝恵代表取締役社長に聞きました。

―まず社長就任までの経緯をお聞かせください。

名古屋大学法学部、愛知大学法科大学院を卒業し、名古屋市役所に入庁しました。財政局税務部税制課で市税に関する条例、規則、通達等の制定改廃、税制に関する研究、解釈などに従事してきました。

父の古川長武会長からは「これからは女性も職業を持たなければならない」と言われて育ちました。

当社については、祖父、父が経営していたため、経営権や大まかな業務内容について知ってはいましたが、学んだ学問を活かし、やりがいのある仕事に従事しており、会社を継ぐという意識は全く持っていませんでした。そうしたところ、当社の規程に定める社長定年の歳が近づいた父から、後を継いでもらいたいとの打診を受けました。

突然の話で最初は戸惑いましたが、幼い頃から創業者である祖父(母方)と父両者の会社にかける思いを間近で見てきました。比較的恵まれた環境を歩んでこられたのは国際電業のおかげだということも重々承知していたため、求められているならば残りの社会人人生は当社で頑張っていこうと思い、2022年に取締役として入社しました。現在まで会社運営全般に関することに従事しています。

―全く異なる分野からの転身ですが、不安はありませんでしたか。

当社は、フットスイッチ、ソレノイド、空調ダクト用切断システムなど独特な製品を手がけており、細かい製品の仕様についてはわからないところもあります。入社以来、社内での対話を重視しつつ、今までの経験で培った視点も織り交ぜながら事業方針など運営全般に従事してきました。専門的なことはプロである仲間を信頼し、社内のコミュニケーションを大切にしながら、事業戦略の策定やより働き甲斐のある職場づくりを行っていくつもりです。

―業績の見通しはどうでしょうか。

先期の売上高は前期比11%増でした。コロナ禍の影響でしばらく策定していなかった中期経営計画を策定し今期から実行する予定でしたが、国内外の社会情勢の不透明さが加速しており、景況感の見通しが立てられないため、一年延期しました。来期から実行できるよう準備を進めています。

―各製品の状況はどうでしょうか。

フットスイッチは堅調です。ただ、自動化やDXの波の加速により楽観視はできないと考えています。そこで、従来の工作機業界、医療機器業界に加え、美容関連、アミューズメント関連、海外など新たな柱となりうる業界でのニーズ拡大を図っています。

ACソレノイドに関しては、競合がないオンリーワンのメーカーになっています。オンリーワンであることを活かし、使用事例の提案などにより機構部品としての更なる魅力を発信し、新たなニーズの開拓を行っています。

空調ダクト用切断システムは、新発売のファイバーレーザー切断機が好調です。8月には、生産拠点として東郷工場(愛知県愛知郡東郷町)を追加し、生産体制の強化を図る予定です。

―営業面、経営面での強化策は。

 従来は製品を持ち込んでお客様に説明していましたが、現在はタブレットなどを活用しています。製品仕様や外観説明に加え、動画で具体的な使用事例を紹介し、視覚イメージに訴える提案が可能となっており、新たな業界からの引き合いにも繋がっています。今後販売に力を入れるインドを始め海外の展示会でも、製品仕様などが一目で分かると好評で、PRに役立っています。

 経営面では、人事評価・賃金体系を刷新します。スキルアップや経営計画への寄与度が評価に繋がるスキームを策定中です。具体的には、評価項目を明確にすると共に、個人目標の達成度も評価に反映させます。キャリアパスが明確になり、一人ひとりのモチベーション向上に繋がることを期待しています。

 また、企業にとって最も重要なのは「人財」です。企業ブランディングの一環として、メディアプラットフォーム「note」や「X」で当社の様子を発信し、採用活動に役立てています。

―女性の活用についてはどうでしょうか。

採用者の半数近くを女性が占めています。縁あって仲間となった方が性別に関係なくスキルを活かせるよう、職場環境を整えています。誰もが100%力を発揮、活躍してもらいたいですし、そのための環境作りには、より力を入れていきたいと考えています。

―抱負については。

 私は働くとは、「端(はた)を楽(らく)にすること」だと考えています。自分を取り巻く端にいる人にまでお役に立てるよう動くことが、働くということだという意識で日々仕事に向き合っています。図らずもこれは、「企業活動を通じ、社会に貢献しよう」、「自分一人だけではなく、より多くの人の幸せを考えよう」、という当社の社訓の趣旨に通ずるものです。

 この意識を社内で共有し、オンリーワンの価値を提供し続けることで「キラリと光る存在感のある企業」として、持続可能な会社を目指します。

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