操作用スイッチ/Control Switchとは?
操作用スイッチとは?
人が機械を動かす時に一番初めに触れる電子部品
スイッチとは、大まかに言うと「切り替えを行う電子部品」のことで、その種類は「操作用スイッチ」と「検出用スイッチ」の2つに大きく分けられます。操作用スイッチは人によって操作されるスイッチで、検出用スイッチは機械によって操作されるスイッチです。操作用スイッチには押しボタンスイッチやセレクタスイッチ、トグルスイッチなどがあり、検出用スイッチはマイクロスイッチ、リミットスイッチ、近接スイッチ、光電スイッチなどが含まれます。
操作用スイッチは電源のオンオフや動作指令、回路の切り換えなどを担う電子部品です。人間が機械をスタートさせるため、一番はじめに触れるのが操作用スイッチで、稼働中に設定の変更などで触れるのも操作用スイッチ、機械を停止させるために触れるのも操作用スイッチです。機械のはじまりから終わりまで、最も人と触れ合い、触られる部分が操作用スイッチであり、そこには確実性や耐久性、高い信頼性が必要となります。また人と機械を直接的につなぐ重要な役目も担っており、そのため操作感やデザイン、視認性、判読性などが他の電子部品以上に求められます。機械や装置との調和も大切となり、単に機能性だけでは選べない重要な電子部品です。
あるスイッチメーカーによると「人間が機械を動かす時、一 番はじめに触れるのが操作用スイッチ。操作用スイッチ は人と機械をつなぐHMI(ヒューマンマシンインター フェース)であり、機械のなかでも最も重要な部品。触れた時の感触や操作感、見た目のデザインがとても大事となる」 と話し、私たちの生活に最も身近な電子部品と定義づけています。
操作用スイッチの種類
操作用スイッチには、押しボタンスイッチ、タクティルスイッチ、メンブレンスイッチ、カムスイッチ、セレクタスイッチ、ロータリースイッチ、トグルスイッチ、ロッカスイッチ、フットスイッチ、 トリガスイッチ、デジタルスイッチ、多方向スイッチ、スライドスイッチ、DIPスイッチ、イネーブルスイッチ等の種類があります。操作用スイッチは、ボタンを押し込んだり、回したりして 電源のオンオフや動作指令、回路切替等を行います。
操作用スイッチの種類と構造一覧
人 | 操作部 | 操作方式 | 接触形式 | |
押しボタンスイッチ | 指・手 | ボタン | 押し引き | 開閉 |
タクティルスイッチ | 指・手 | ボタン | 押 | 開閉 |
メンブレンスイッチ | 指・手 | ボタン | 押 | 開閉 |
カムスイッチ | 手 | 取手 | 捻回 | 開閉 |
セレクタスイッチ | 手 | 取手 | 捻回 | 開閉 |
ロータリスイッチ | 手 | 取手 | 捻回 | 摺動 |
トグルスイッチ | 指 | 取手 | 起倒 | 開閉 |
ロッカスイッチ | 指 | 取手 | 押 | 開閉 |
フットスイッチ | 足 | ペダル・ボタン | 踏み | 開閉 |
トリガスイッチ | 指 | 引き金状取手 | 引き | 開閉 |
デジタルスイッチ | 指 | 取手 | 回転 | 開閉 |
多方向スイッチ | 手 | 取手 | 多方向起倒 | 開閉 |
スライドスイッチ | 指 | 取手 | 摺動 | 開閉 |
DIPスイッチ | 指 | 取手 | 起倒 | 開閉 |
ロープスイッチ | 指・手 | ロープ | 引き | 開閉 |
静電容量スイッチ | 指・手 | ボタン・画面 | 押 | 開閉 |
操作用スイッチの用途と選び方
操作用スイッチは、その名の通り機械や機器を「操作する」ためのスイッチで、工場内における製造装置はもちろん、非製造業である農業、漁業などで使う農機、建設業における建機や各種ツール、インフラにおける制御装置の操作ボックス、サービス業や小売業で使われる業務端末やOA機器の操作用ボタンとして、あらゆる装置に組み込まれています。また家電や自動車、 住宅設備等にも取り付けられています。
操作用スイッチの用途は 1. 電源開閉用、2. 制御動作の事前設定(指示)と制御回路の切換用、3. 制御信 号の処理のためのプログラム設定用の 3 つがあります。それぞれのスイッチによって適切な使い方があります。
操作用スイッチの一般的な用途別分類例
電源開閉用 | 指令・切換用 | プログラム設定用 | |
押しボタンスイッチ | ○ | ○ | |
タクティルスイッチ | ○ | ||
メンブレンスイッチ | ○ | ||
カムスイッチ | ○ | ○ | |
セレクタスイッチ | ○ | ○ | |
ロータリスイッチ | ○ | ○ | |
トグルスイッチ | ○ | ○ | ○ |
ロッカスイッチ | ○ | ○ | ○ |
フットスイッチ | ○ | ||
トリガスイッチ | ○ | ||
デジタルスイッチ | ○ | ||
多方向スイッチ | ○ | ||
スライドスイッチ | ○ | ○ | |
DIPスイッチ | ○ | ||
ロープスイッチ | ○ | ||
静電容量スイッチ | ○ |
操作用スイッチ選定のチェックポイント
箇所 | チェックポイント |
操作部と表示部 | 操作性(形状や大きさなど)、強度、動作機能は 誤操作についての配慮は 色分けと配色は ランプ電圧と寿命は |
接点部 | 接点極数は、接点回路のインターロックは 実負荷とスイッチ定格はマッチするか 突入電流と寿命、溶着の懸念はないか 絶縁耐圧は、特に小型スイッチの時は良いか 機械的寿命、電気的寿命は良いか 直流誘導負荷に対する接点保護は必要ないか 指令パルス幅、接点バウンスやチャタリングは誤動作につながらないか |
構造部(取付、端子) | 取付スペースと取付強度、取付やすさは はんだ付け時のはんだ温度、時間とフラックスの浸入は コネクタ、ネジ端子の時の強度は 付属品の種類と取り扱いは 適合電線サイズは |
環境性 | 保護構造(防塵、防水、防油、耐薬品など)は必要か 振動衝撃は、 周囲温度、湿度、ガスは |
確認事項 | メーカーとの仕様確認は 規格認定の要否と規格への適合性は 回路の安全対策(フェールセーフ、フールプルーフ)は 保守点検・保管・在庫品の管理は 付属品と本体との関連は |
操作用スイッチの市場動向
操作用スイッチの市場規模について、JEITA(電子情報技術産業協会) のグローバル統計によると、操作用スイッチ、検出用スイッ チ、キーボードスイッチ、リモコン等も含めたユニットス イッチなどスイッチ全般で、2015年度が4902 億円、 2016年度が4634億円、2017年度が4834億 円となり、4600億円から4800億円程度で推移しています。
NECA(日本電気制御機器工業会)の操作用スイッチに限った統計によると、2017年度は462億円を突破。 リーマンショック直後の2009年度の263億円から8年で約200億円増加し、500億円に向けて順調に拡大 を続けています。特に目覚ましいのが海外向け。2009年度は61.1億 円だったものが2017年度には100億円超の増加と なる167.8億円まで拡大しています。背景に機械輸出の好調があり、日本機械輸出組合によると2017年の機 械輸出額は51兆2909億円で前年度比9.6%増加。自動車の輸出好調、工作機械の受注高が過去最高の 1兆7800億円に到達、IoTを背景とした半導体製造 装置の需要増加、世界的に広がる産業用ロボット導入な ど、各機械が好調でリーマンショック前に回復しつつあります。 また、労働力不足に対する自動化ニーズ、老朽化したインフラ整備と機器の入れ替え需要等で国内は好調が続いています。
操作用スイッチの技術動向
近年はスマートフォンやタブレットの隆盛を筆頭に、機 器の操作コントローラにタッチパネルコンピュータやタッ チパネル表示器が使われるケースが増えている。 矢野経済研究所の調査によると2016年の静電容 量式タッチパネルの世界市場は、前年比3%増加の 17億4760万枚。現在はスマートフォンとタブレット が中心だが、今後は車載向けや産業機器向けも着実に伸 びていくと見られている。家電やデジタル機器、ATM、 キオスク端末のような業務用機器でタッチパネルが多く 採用され、メカニカルなハードウェア形のスイッチから タッチパネルスイッチへ「スイッチのソフトウェア化」の 動きが出始めている。 とは言え、メカニカルなスイッチがすべてタッチパネ ルに置き換わると言うとそうではない。製造装置や産業機械、インフラ向け装置などシステムの安全性や信頼性、 操作ミスの防止などが強く求められる用途ではメカニカ ルなハードウェアをベースとした操作用スイッチが変わら ず選ばれている。安全性を高めるには、作業者の誤認を 防ぐために機械の見た目と操作はシンプルにした方が良 く、オンオフの感覚が明確であることも重要だ。タッチパ ネルはその点でメカニカルなスイッチに劣り、あるスイッ チメーカーは「タッチパネルかメカニカルなスイッチかの どちらかではなく、用途や必要性に応じて適切なものを選 ぶという市場が出来上がっている。これからもそれは変わ らないだろう」としている。
また機械や装置に対し、これまでの機能性や信頼性 に加え、デザイン性が求められるようになるなか、タッ チパネル化と並んで採用が広がっているのがメンブレン スイッチ。グローバルの市場規模は、2025年までに 131億4000万ドルに達すると予測されている。メン ブレンスイッチはシートと電子基板で構成され、ボタンの 形や配置を柔軟にデザインできるのが特長。家電製品な ど民生品では早くから採用が広がってきたが、近年は産 業機器でもメンブレンスイッチと従来のメカニカルなス イッチと組み合わせてデザイン性の高いコントロールパネ ルなども多く出ている。シートの素材によって耐水性や耐 薬品性、防塵性などを高めることができ、さらなる広がり が期待されている。
操作用スイッチ関連規格
JIS 規格
JISC4526-1 機器用スイッチ-第1部:一般要求事項
JIS C 8201-1 低圧開閉装置及び制御装置-第 1 部 : 通則
JIS C 8201-5-1 低圧開閉装置及び制御装置-第 5 部
JIS C 8201-5-5 低圧開閉装置及び制御装置第 5 部 : 制御回路機器及び開閉素子- 第 5 節 機械的ラッチング機能をもつ電気的非常停止装置
JIS C 8201-5-8 低圧開閉装置及び制御装置 – 第 5-8 部 : 制御回路機器及び開閉素子 -3 ポジションイネーブルスイッチ
JIS C 6571 電子機器用トグルスイッチ
JIS C 5445 電子機器用スイッチ-第 1 部 : 通則
NECA 規格
NECA C 4520 制御用スイッチ通則
NECA C 4521 制御用ボタンスイッチ
NECA C 4522 制御用カムスイッチ
JEITA 規格
RC-5121A 電子機器用ディップスイッチ品種別通則
RC-5123A 電子機器用電源スイッチ
RC-5125A 電子機器用スライドスイッチ
RC-5126A 電子機器用タクティルプッシュスイッチ品種別通則
RC-5127A 電子機器用ディップロータリスイッチ
RC-5129 電子機器用ロータリスイッチ品種別通則
RC-5130 電子機器用トグルスイッチ品種別通則
RCR-5100 電子機器用スイッチの安全アプリケーションガイド
出典:一般社団法人日本電気制御機器工業会(NECA) 「制御機器の基礎知識 スイッチ・表示灯編」