本格的な普及はこれからとは言え、自動化には欠かせないツールとしての認知度や理解は定着した協働ロボット。その意味では、協働ロボット市場は新たなステージに突入したと言っても良いでしょう。
協働ロボットの元祖にして、これまで率先して市場を作ってきたユニバーサルロボット。新たな局面に入り、どんな戦略を描いているのでしょうか?ユニバーサルロボット日本法人ゼネラルマネージャーの山根 剛 氏に話を聞きました。
攻勢強める中国メーカー
ーー最近の日本の協働ロボット市場について
産業用ロボットでは日本メーカーに敵わないことから、中国メーカーが共同ロボットで日本市場に攻勢を強めています。当社にとって脅威ではありますが、一方でプレイヤーが増えれば市場が広がるという側面もあります。そこは他社と差別化して提案していくことが大事です。
UR最大の特徴は使いやすさ 自分で自動化したい人には最適
ーー差別化とは?
URの協働ロボットの強みは、PLCを使わずにロボットと機械で自動化装置ができ、動かせることです。PLCを使った装置になるとどうしても専門家のSIerまかせになり、ユーザー主導で自動化を進めていくのが難しくなります。その点、URの協働ロボットならティーチングも簡単で、ハンドなど周辺の装置もUR+で揃っていて、アプリケーションプログラムも用意されています。自分たちの現場は自分たちで自動化したい、改善していきたいという人にはピッタリです。
先日、ある日本の機械メーカーから協働ロボットを導入したいという話がきて内容を聞くと、①機械の無人化と自動化がしたい、②機械をレトロフィットして有効活用したい、③機械の汎用性を向上したい、④SIerを使わずに自分たちでやりたいということを希望していました。いくつかのロボットメーカーと競合しましたが、最終的にはURのプログラミングのしやすさ、簡単に自分たちでアプリケーションを作れ、技術を高められることを評価してもらえて採用にいたりました。
最近は人手不足や自動化技術の充実により、再び自社の生産技術を強化していこうという動きが出てきています。そのなかでもURの協働ロボットは、扱いやすく、簡単にプログラムを組むことができ、再配置して再利用もできます。自分たちで自動化に挑戦したい人にはちょうど良く、彼らに対してロボットを貸し出し、適切なトレーニングを提供すれば、どんどん使って技術が上がっていきます。そうなれば価格競争にもならず、お互いにとっても良いことだと思います。
協働ロボットに触れてもらう機会を創出
ーーそうした需要を取り込むため、どんな取り組みをしていますか?
協働ロボットを見て、触って、使ってもらう機会を作るのが大事で、トレーニングや体験会、セミナー等を積極的に行っています。
昨年、新しいアプローチとして初めて名古屋でプライベートショーを開催しました。19社のUR+パートナー企業とSIerが出展し、たくさんのアプリケーションを展示しました。セミナーもトヨタ自動車などエンドユーザーが自社の活用事例を話してもらった結果、2日間で1000人以上が来場し、お客様からの評判も良く、とても有意義なものとなりました。来年も是非やりたいと思っています。
また、もう少し小規模なものとして、お客様の工場を訪問して実施するプライベートショーも増やしています。会議室や食堂を借りて、1日常設展示すると、お昼休みや休憩時間に現場の人が見にきてくれます。こうした接点をもっと増やしていこうと考えています。
ーーセミナーやトレーニングについては?
日本全国に認定トレーニングセンターを整備し、現在9カ所まで広がりました。そこでは購入してもらったユーザーに対し、よりレベルの高い技術を身につけてもらうための有償トレーニングを実施しています。
協働ロボットを見る目と役割の変化
ーー数年前に比べると協働ロボットに対する見方もだいぶ変わっていますね
以前は協働ロボットを検討する際、ROIや生産性の話ばかりでしたが、最近は少し変わりつつあります。
人手が欲しいが採用が難しいから協働ロボットで自動化を進めるしかないという経営者が増えてきています。
また協働ロボットを入れたことで、今までにない新しいツールが現場に入ってきて、社内の雰囲気が変わったという経営者の声もあります。若い人がロボットをすいすいと動かしている姿を見て周りの刺激になり、新しい時代に変わってきていることを皆が感じるようになったと言います。協働ロボットが新しいコミュニケーションとして社内の潤滑剤として機能し、人材の採用や退職の防止にもなるのではと期待しています。。
若い人にもっと使ってもらえる場の創出に注力
ーー今後に向けて
新たなチャレンジとして、教育分野へのアプローチを強化していきます。
ヨーロッパやアメリカ、韓国等ではURを使ってロボットを学ぶ授業があり、高校や大学の授業の単位にもなっています。URを使った研究論文も多く出されており、若い人への浸透を戦略的に行っています。
URの協働ロボットは、ロボットを触ったことがない人に対する入門機に最適です。日本ではURの協働ロボットは多くの大学で導入されていますが、今後はポリテクセンターや高専などへのアプローチを進めていきます。
当社の役目は、いま現場にいる人材とこれから現場に入る人材をひとりでも多く自動化人材にしていくこと。若い人がロボットに触れて使える機会を多く作り、自動化に貢献してきます。