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【オムロン】半導体製造プロセス向け温度調節ユニット「NX-HTC」 温度制御で半導体の進化と現場の働き方改革に貢献

世界的な品不足、国内へのファブ新設、国産メーカーの誕生など、話題に事欠かない半導体産業。今後もその市場は成長が見込まれるなか、足元では増産に向けた生産能力の増強やより高性能な半導体の研究開発が進んでいます。

オムロンは、このほど半導体製造装置向けに特化した温度調節ユニット「NX-HTC」を開発し発売を開始しました。これまでの温度調節器と何が違い、現場にどんなメリットをもたらすのか?製品開発を担当したオムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 コンポ事業部 第1開発部 第2開発課の國安裕生氏と、尾崎将宏氏に話を聞きました。

半導体業界が強く求める温度制御の高精度化

ーーNX-HTCを開発するにいたった市場や技術的背景を教えてください

いまの半導体は回路の微細化や積層化が進み、とてもデリケートになっています。そのため製造プロセスにおけるわずかな変化が品質に影響を与え、歩留まりを悪化させます。特に半導体ウエハーを製造する前工程ではより緻密な品質管理が必要とされ、温度についても高精度の制御が強く求められています。そうしたニーズに応えるために開発したのが「NX-HTC」となります。

半導体製造プロセス向けに最適化した温度調節ユニット

ーーNX-HTCはどんな製品ですか?

國安氏 NX-HTCは、汎用のPLC温度調節ユニット「NX-TC」をベースとし、半導体業界のお客様の声を取り入れて新たに開発したモデルとなります。

土台となったNX-TCは、独自の「適応制御技術」を搭載し、熟練者のように品質に影響を与える状態変化を捉え、PID値を自動調整して最適な温度制御状態を維持できる温度制御ユニットで、産業ネットワークもEthernet IPやEtherCATに対応し、半導体をはじめ、包装機械や成形機など幅広い機械に搭載されているヒット商品です。

NX-HTCでは半導体製造プロセス向けに、機能の取捨選択や進化を行い、省スペース化、高精度化し、さらには「特徴量の見える化」という新しい機能を追加しました。

より高密度・高精度な温度測定・制御を可能に

ーー具体的にはどのように変わったのですか?

國安氏 温度制御について、半導体業界が求めている品質をクリアするためには、①より多くのデータから装置の状態を正確に把握して制御すること、②より細かく温度を制御できること の2点がカギになります。NX-HTCではそれらを解決するために、機器サイズはそのままで制御できるチャンネル数を増やし、温度分解能も高めました。

①については、単純に、測定箇所を増やすことでデータは増やせますが、そうすると機器の数が増え、制御盤のサイズも大きくなってフットプリントが大きくなります。また装置設計の大幅な変更も必要となり、全体の生産性を考えたら効果的ではありません。

そこでNX-HTCでは、サイズはそのままで8チャンネルまで入出力できるようにし、実質的に省スペースになるように改良しました。

②については、NX-TCは温度分解能が0.1℃だったところを、NX-HTCでは0.01℃まで高精度化しました。またアナログ入力も追加しました。お客さまからは微妙な調整をする際にちょっとだけ温度を上下したいという声が多く、それを反映させたものとなります。

ーーより入出力の密度を高くした上で、さらに細かく制御できる様にしたということですね

國安氏 その通りです。

例えば、テスト用ウエハーには数十~100くらいの熱電対が接続されていて、半導体製造装置を作る際にはそれを使ってウエハー全体をキメ細かく測定して温度ムラが出ないように調整し、理想の状態を作り上げています。装置を立ち上げた後の実際の稼働環境でも同じようなことができればいいのですが、それはコストや運用などさまざまな面で非現実的です。

NX-HTCでは、使い勝手は従来のまま、測定点数を増やし、より高精度に温度制御できるようにすることで、少しでも理想の状態に近づけることを目指しました。

ソフトウェアの工夫で使いやすさも向上

ーーでもこれだけ高性能化・多チャンネル化すると設定や操作が難しくなりそうです

尾崎氏 そうなることも織り込み済みで、高性能化・多チャンネル化しても使い勝手が良く、設定も簡単にできるようにソフトウェアを作り込みました。

NX-TCは1からすべてお客様が機能をカスタマイズする仕様になっているのに対し、NX-HTCでは、目標値や測定値といった基本的な機能、PID、外乱抑制、特徴量の見える化と、主な機能を4つの大きなかたまりに分類し、お客様が必要なものを選択し、そこから細部の設定に入っていくようになっています。これによってパラメータ設定がしやすくなり、装置に合わせた機能の追加や削除も簡単に設定できます。最低限のパラメータさえ用意しておけば基本的な設定はスムーズに行うことができ、そこで空いたリソースを機能の作り込みやパラメータの追い込みなどに充てることができるようになります。

見えない異常を発見&予兆保全を実現する「特徴量の見える化」

ーーもうひとつの特長でもある「特徴量の見える化」機能とは何ですか?

國安氏 特徴量の見える化は、NX-HTCの目玉の一つとして開発した新機能となります。

半導体製造プロセスのなかでは、温度波形に異常がないように見える、正常と同じように見えるといった定性的な比較をせざるを得ず、それ以上の追求が難しいケースがよくあります。それに対して特徴量の見える化は、オーバーシュート/アンダーシュートの量といった温度に関するデータを定量化するだけではなく、平均操作量や最大操作量などの操作量に関するデータも定量化できる機能です。操作量という温度とは別の切り口のデータを分析できるようになるため、いままで分からなかった。

これによっていままで分からなかった異常を発見できるようになり、予兆保全の実施やトラブル時の原因究明などに役立ちます。

ーー温度制御におけるIoT機能のようですね

國安氏 例えば、ステージにパーティクルが付着した状態でウエハを設置するとパーティクルの付着した部分の熱伝導が悪くなります。その結果正常時と同じ操作量では温度が上がらず、正常時よりも操作量が8%上がっていることがわかりました。温度は一定になるようにすぐフィードバックをかけるため、温度波形を見ているだけだと気づくことが難しいです。またメンテナンス時のステージへの熱電対の差し込み不良を発見したケースでも、パーティクル付着の時と同様に、温度波形では正常時との見分けがほとんどつきませんでしたが、操作量が増加して異なる波形が出ていたことから発見することができました。このように、特徴量の見える化は、温度だけでは分からない装置の状態も、ほかのデータを見ることで察知できるようになります。いまはさまざまなトラブルとその時の特徴値の波形のパターンを照らし合わせ、特徴値の変化からトラブルを推測するといった機能の開発も進めています。より現場で使いやすく、効率的になるような機能強化を考えています。

温度制御の技術を通じて半導体業界の発展と働く人々を幸せに

ーー今後に向けて

國安氏 ファブにおける半導体製造装置のメンテナンス業務は、事後保全や計画保全が主流で行われていて、保全担当者は不良の原因を探し出すのに大変な苦労をしています。特徴量の見える化機能を使えば何かがおかしいと早めに気づくことができます。原因究明にも役立ち、保全担当の方ももっと楽しく仕事ができると思います。

NX-HTCを通じて半導体とものづくりの高度化に貢献し、特徴量の見える化機能によって半導体産業で働いている人々の幸せに貢献する。この両立を目指していきたいと考えています。

尾崎氏 NX-HTCを発売して終わりではなく、これがスタートだと考えています。お客様からいただいた要望をソフトウェアを通じて機能を強化し、価値を高めていく。お客様に喜んでいただけるよう課題解決を進めていきたいと思います。

また、あらゆる産業で半導体が不足して困っています。さらにこれからも半導体の需要は拡大すると見込まれていて、もっと半導体の数が必要になり、同時に半導体の高性能化も求められています。オムロンとして、お客様と一緒により良い製品を作り、半導体産業、ひいてはモノづくり業界全体へもっと貢献していきたいと考えています。

https://www.omron.com/jp/ja/