製造業・FA各社の経営戦略と取り組み、最新技術・製品情報を各社キーマンに聞く

【福西電機】若手とともに成長し、わくわくする仕事をつくる


電設資材やFA機器などを取り扱うエレクトロニクス専門商社の福西電機は、2022年にパーパスを策定し、自社の将来と競争力強化に向け、若手を中心に全社員が活躍できる組織・文化づくりを進めています。産機営業本部も20代30代の若手の成長を後押しし、製造受託などサービスも拡充し、顧客の課題解決のパートナーへの活動を強化しています。現在の状況について、執行役員 産機営業本部長 兼 制御営業統括部長の松本 潤典 氏(写真右)と、産機営業本部 産機営業統括部長植松 淳 氏(写真左)に聞きました。

ーー現在の状況は?

2023年度の売上高は900億円、前年度比106.8%で過去最高業績となりました。産機営業本部は厳しかったですが、全体としては良い結果を残すことができました。

売上構成は、産機営業本部が全体の18%を占めています。本来20%ほどありますが、FA市場の厳しさから少し落としています。

ーー産機営業本部の状況は?

2024年度の1Qの受注状況は、前年度の4Qの流れがそのまま来ている印象で、2Qが底になると見ています。

最近はデジタル商材やエネルギー関連が順調ですが、一方で産機部門では協力会社と一緒に制御盤やハーネス、プリント基板など、ものづくりも手がけています。労働人口の減少やチャイナリスク、為替影響など難しい状況が続くなか、当社がお客様のサプライチェーンのなかに入って制御盤やEMSを担うといったビジネスも増えてきました。

バリューエンジニアリングという切り口でも、中に入れる部材の置き換え提案ができたり、どう付加価値を上げていくかといったこともできるので、仕事としては魅力を感じています。日本全国に協力会社があるので、もう少し仕組みややり方を整備し、ビジネス拡大を目指します。

挑戦を通じてわくわくをつくる

ーーパーパスを策定して1年、社内の雰囲気はいかがですか?

「人・技術・情報の架け橋となり、最適解で『福(しあわせ)』あふれる未来をつくる。」というパーパスについても、落とし込みの効果が出て、全社で同じ方向を向けるようになってきています。

中長期プランとして未来創造プロジェクトを進め、3月に事業ビジョン「わくわくをつくるInnovative Trading Company福西電機」を明文化しました。

「わくわくをつくる」には、仕事を通じて感動すること、心を踊らせることを体験できるようにしようという意味が込められています。その根底には、挑戦をすることで面白い仕事をしようということにこだわり、若い世代の人たちのチャレンジやトライに対して背中を押して、会社を良い方向に向けていくという思いがあります。若い人たちが動くことで社会が変わっていきます。当社もそれに追従し、事業を継続していく。これを世の中に広めていく活動をしています。

若手が活躍できる組織・風土づくりを強化

ーー2024年度の取り組みについて

2024年度は「未来志向」をテーマとし、パーパスに向けて目線を上げて仕事をしていくため、競争力の強化、全社員の活躍という2つの施策に、社を挙げて取り組んでいます。

競争力の強化に向けては、1月にZEBプランナーに登録しました。ZEBプランナーの活動を通じて当社の付加価値を高め、差別化していく意図があります。また展示会のネプコン、JECAフェアにも出展しました。

全社員の活躍への投資については、DEI(Diversity Equity & Inclusion、多様性・公平性・包括性)の浸透に力を入れています。DEIとは、Diversity Equity & Inclusion、多様性・公平性・包括性を尊重する仕組みですが、当社的な言葉でいえば「D=誰もがみんな、E=遠慮なしで公平に、I=イキイキ働ける」環境づくりで、啓発活動や研修を年間通じて行っています。

会社全体で若手の割合が高くなり、若手が活躍しています。産機営業本部も入社3年以内の20代〜30代の若手が中心として活躍していて、関東担当でいえば8割が20代です。製造業の高齢化が進むなかで、彼らがこれから3・4年経験を積んでスキルも習熟した時には、当社の大きな武器になります。

ーー教育や研修はどう行っているのですか?

これまで教育といえばOJTが中心でしたが、多くの先輩社員が日常的に駆使している技術やスキルは、自分が所属している営業所や担当している業界やお客様に紐づいており、OJTで身につけられるのは属人化したものばかりになってしまいます。

そこで産機営業本部では、スキルを標準化して基礎をしっかりと固め、土台を平準化した上で、それぞれが自ら必要なスキルを習得できるように教育・研修制度を整備しました。例えば、社内向けに「産機の教科書」を作り、それをテキストとして基礎固めを行っています。工場ビジネスの基本や専門用語を解説する140ページを超える内容で、評価も上々です。

顧客との関係強化、セキュリティ商材の拡販に注力

ーー今後に向けて

中期3カ年計画の目標に向けて産機営業本部が貢献していくには、次世代の人材の育成が重要であり、これをしっかりとサポートしていきます。若い人はまだ色がついておらず、スポンジのように吸収できます。産機ビジネスは積み上げが大事であることを理解してもらえるようにリードしていきます。

また顧客との関係強化をしっかりと進めていきます。人事異動でお客様も当社も担当が変わるのは仕方のないことですが、人が変わってもお互いの関係は変わらずにするためにも、個人ではなく、チームとしてお客様との関係構築を強化していきます。

これからの商材としては「セキュリティ」に注力していきます。欧州サイバーレジリエンス法の関係で、OTのなかでもエッジのセキュリティが求められるようになってきています。オープンネットワークのなかで機器同士がつながる状況において、当社の取り扱っているセキュリティ機器をどうアレンジしていくか。セキュリティが当たり前、普通になる前に、コンサルティングなどでお客様との接点を増やし、当社に相談がくるような形に持っていきたいと考えています。

また、これまではハードウェア主体のビジネスをしてきましたが、ハードウェアのなかにソフトウェアも入っていることもあり、ソフトウェアの取り扱いにどこまで関与していくか。そこにも着手していきたいと考えています。

人手不足や複雑化するなかで、お客様が本業を強くするために何を外部に委託し、何を社内に残すか。実際のものづくりも含めて、外部に出すものを当社が取り込み、お客様をサポートしていきます。