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【富士電機機器制御】35年ぶりにフルモデルチェンジ 新たな電磁開閉器のプラットフォームへ 電磁接触器・電磁開閉器 「SC-NEXT」

電磁接触器・電磁開閉器の分野で国内トップシェアを誇る富士電機機器制御は、「新SCシリーズ」(1988年発売)、「NEO SCシリーズ」(1999年発売)を中心にラインアップしており、これらのシリーズは累計で1億5000万台以上も生産されたベストセラー製品となっています。このほど35年ぶりに設計を全面的に見直し、「SC-NEXT」としてフルモデルチェンジしました。

開発背景や変化点ついて、富士電機機器制御 開発統括部 開閉制御開発部 開閉機器開発課 課長の大久保幸治氏(写真右)と、事業統括部 業務部 開閉機器グループ グループマネージャーの佐藤雄介氏(写真左)に話を聞きました。

ーー電磁開閉器を35年ぶりにフルモデルチェンジしました。その背景は?

これまで、電磁開閉器の主たる選定基準は安定して稼働することでした。しかし、今の制御盤はエンドユーザーからの要求でより小形化が進んでおり、盤内機器である電磁開閉器も小形化する必要がありました。

また近年、「制御盤の付加価値を高めたい」という市場ニーズの高まりを受け、IoT機器が追加されるなど、制御盤内の機器数は増加傾向にあります。これにより以前にも増して盤内スペースに余裕がありません。そのため当社も小形化によりお客様の課題解決に貢献する必要がありました。

その一方で、従来の新SCシリーズ・NEO SCシリーズは長期間にわたってお客様に使われており、「変えないで欲しい」という声も数多くありました。電磁開閉器は当社の主力製品であり、本丸とも言える事業です。そこで、従来から変わらない使い方を取り入れつつ、最新のトレンドを反映した製品を作らなければならないと判断し、完成形を超えていくという強い思いの元、SC-NEXTの開発に至りました。

完成度が高く、定番化している従来のシリーズ 5000万台以上が現役で稼働中

ーー従来のシリーズはこれまでどれくらい売れているのですか?

富士電機は1954年から電磁接触器・電磁開閉器の生産を始め、昨年、累計生産台数3億5000万台を突破しました。このうち新SCシリーズ・NEO SCシリーズは1億5000万台ほどを占めています。

電磁開閉器の推奨交換時期は10年ですので、そこから計算すると今も約5000万台以上がお客様の装置の中で動いています。

ーー5000万台以上が現役で動いているとはすごいですね。それだけのヒット商品ですからフルモデルチェンジは相当難しかったのでは

新SCシリーズ・NEO SCシリーズは、電磁開閉器として極めて高い完成度を誇り、お客様にとって使いやすく、メーカーとしても作りやすい製品でした。35年以上前に開発した先輩方はとても偉大ですね。しっかりと緻密に考え、素晴らしい製品を作り上げられたと思います。今回、それをフルモデルチェンジする訳ですから、非常に高いハードルを課せられたと思っています。そのため、SC-NEXT開発プロジェクトはこれまで以上にじっくりと時間をかけて進めてきました。様々な現場で使われる製品だからこそ、お客様へのヒアリングには特に時間をかけ、2023年10月発売開始に至りました。

小形化と環境性能を向上しつつ前シリーズの使い勝手を踏襲

ーーSC-NEXTで進化した点は?

まず、小形化と省エネです。最大で29%小形化し、コイルの消費電力を大幅に低減して交流操作形で最大29%、直流操作形で最大73%の省エネを実現しました。モデルチェンジにあたっては、従来品とできるだけ使い勝手は変えずに、どこを強化したらお客様が喜んでいただけるかを考えて設計いたしました。

次に、防塵性能の強化があります。例えば小さなゴミや異物が筐体の隙間から内部に侵入して導通不良が起きたというお客様の声が定期的に発生していました。SC-NEXTでは設計を全面的に見直し、開口部面積を70%減らしました。加えて部品同士の嵌合方式も変えることでトラブルの原因を未然に防ぐようにしました。

また、近年は脱炭素、カーボンニュートラルに向けて環境配慮が重要な要素になっています。今まで、これらの環境対策については社会貢献的な意味合いが強めでしたが、今はその対応をしていないと採用されない時代になりつつあります。SC-NEXTでは使用しているプラスチック材料の98%を再生利用可能なものに置き換え、将来に向けた新素材も積極的に採用しています。

このほか、お客様の使用状況にあわせ補助接点構成も1極から4極まで使いたい分だけ選べるようにすることで更なるスリム化が図れるようにしました。

ーー逆に継続したところは?

これまでと同じように使えるようにユーザーインターフェース、使い勝手や互換性は極力踏襲しています。大きく変えると、組み立てや配線作業だけでなく、調達する際の手配の方法や在庫も変わってきます。関連するすべてのやりとりについて、従来品の良い点は今まで通りのやり方を踏襲し、スムーズに置き換えできるように心がけました。

具体的には機器の選定・手配が容易に行えるように形式表示を見直したり、WEBツールを活用しお客様に情報提供を行っています。

順次ラインアップを拡大し置き換え本格化へ注力

ーー今後に向けて、一言ずつお願いします。

現在SC-NEXTは定格電流値18Aまで発売しています。2024年度中には65Aまでのラインアップを発売する予定です。

今回のリニューアルで新SCシリーズという完成された製品にメスを入れました。SC-NEXTがこれから長い間プラットフォームになります。お客様に引き続き長くご使用いただけるよう、今後も信頼性を高めていきます。

今回18Aまでの製品を先行して発売しましたが、これからさらにラインアップが充実する予定です。従来品同様、SC-NEXTをお客様に受け入れていただけるよう活動することが、我々の使命だと思っています。

また、SC-NEXTは海外でも販売する製品です。日本国内とは異なる環境で制御盤を製作している場合もあります。そこでSC-NEXTの特長である防塵性能を活かしたPR活動もグローバルに行っていきたいと考えています。