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【シュナイダーエレクトリック】表示・操作・制御を1台で 表示器付コントローラ「STC6000シリーズ」

「Pro-face(プロフェイス))と言えば、HMIの元祖であり、シュナイダーエレクトリックが展開するHMI・表示器の超有名ブランド。メーカーやコンポーネンツの種類を問わずあらゆるものとつながり、作業者と機械の間に立って作業者の意志・指示を機械に伝え、機械の状態を作業者に伝える役目を果たします。

そんなHMI・表示器の新製品として、表示と操作に加え、制御まで1台でできるオールインワンタイプの表示器付きコントローラー「STC6000シリーズ」を発売。シュナイダーエレクトリック インダストリアルオートメーション事業部 商品企画部 近藤 忍 氏に聞きました。

表示器とPLCを一体化

ーーSTC6000シリーズはどんな製品ですか?

プログラマブル表示器は機械のHMIとして表示と操作ができ、PLCやコントローラーは機械を動かす頭脳となって制御機能を果たすものです。そのプログラマブル表示器の表示と操作機能、PLCの制御コントローラー機能を1つにまとめたものが表示器付きコントローラー「STC6000シリーズ」です。

20年以上前からプログラマブル表示器とPLCを一体化したモデルには「ロジタッチシリーズ」や「GLCシリーズ」があり、現行製品としては「LT3000シリーズ」と「LT4000Mシリーズ」があります。STC6000シリーズはその流れを汲む最新モデルとなり、現行のタッチパネル表示器のベーシックモデル「ST6000シリーズ」にコントローラー機能を取り付けて一体化したものです。

ST6000シリーズはプログラマブル表示器のなかでも、最も手ごろで手に入れやすいHMI市場のベーシックレンジの製品であり、2020年に第1弾としてグローバルで主流のワイド液晶を4型ワイド~15型ワイドまでの全機種に採用したシリーズになります。その後に第2弾として2022年10月に既存装置への採用シェアが高いアスペクト比4:3の5.7型 10.4型を追加で販売を開始しました。そのプログラマブル表示器ST6000シリーズにコントローラー(C)の機能がついたものとしてシリーズ名は「STC6000シリーズ」となっています

デジタルI/O 32点標準装備 制御盤の省スペース・省配線化に

ーー見た目はプログラマブル表示器と変わりないですね

ぱっと見は通常のHMIですが、背面に小型PLCが内蔵されています。そのためHMIとして表示と操作ができることに加え、制御もできます。PLCを内蔵しているので、PLCと表示器を別に設置した構成に比べて省スペース省配線になり、制御盤を小型化したり、盤内スペースを広げられます。

ーーPLCの機能としては?

入出力はデジタルI/Oの入力16点、出力16点の合計32点を標準装備しています。デジタルI/O、アナログI/Oは増設モジュールで増やすことができ、65kHzパルス出力や100kHz高速カウンターも標準装備しています。

またユニークな点としてSTC6000シリーズは、シュナイダーPLCの増設モジュールを使用する事ができます。これはPLC部門とHMI部門がコラボした事で実現しており、よりフレキシブルなデジタルI/O、アナログI/Oの増設を可能とします。今後増設モジュールの追加対応も検討しています。

見やすくスタイリッシュな見た目 リモート機能も追加可能

ーーほかに特長的なところは?

5.7型のVGA高解像度の液晶を採用し、これまでに比べて表示色も増え、解像度が高いので、多くの情報を分かりやすく表示できるようになっています。見た目もアルミベゼル採用でスタイリッシュになり、装置の付加価値を高めることにつながります。

旧機種のLT3000シリーズと比べると薄型・軽量化していますがパネルカット寸法は同じなので、置き換えの際も最小限の変更で最新機種に入れ替えることができます。

また、STC6000シリーズは当社が提供するセキュアな通信サービス「Pro-face Connect」に対応し、IoTゲートウェイやルータ、スイッチなどハードウェアの追加や別の通信キャリアとの契約がいらずに、本体に内蔵した通信機能だけでセキュアな通信が可能です。「立ち上げやトラブル時の対応を迅速にするためにリモート機能が欲しい」「新たなサービスとして遠隔保守・メンテナンスを標準機能やオプションとして提供したい」といった要望も実現できます。

画面作成も簡単に 作画代行・サポートサービスも提供

ーーHMIには画面作成も必須です

STC6000シリーズは、当社の画面作成ソフトウエア「GP-Pro EX」で画面を作ることができ、制御のロジックプログラムも同じソフト上で作成できます。ロジックを作成したらそのままドラッグ&ドロップで簡単に作画でき開発工数を削減できます。

HMIとPLCのマスタデータも、従来は別々に用意・管理しなければいけませんでしたが、STC6000シリーズなら1つで済みます。1つのソフトで開発が完結するので効率が良く、立ち上げにかかる時間を短縮できます。

ーー制御は得意ですが、HMIの画面作成は別の頭を使うので大変だという声も聞きます。

そうした声は多くのお客様からよく聞いています。

画面づくりが苦手という方に対しては、有償でお客様の希望に合わせた画面を作成して納品する「作画コンサルティング」サービスを提供しています。

HMIは作業者が直接見て操作するものであり、画面のデザインや操作性がとても重要です。画面づくりは電気設計とは異なるスキル。もともとHMIの元祖として画面づくりやビジュアル化には自信があり、そこを当社の技術者とデザイナーがタッグを組み、直感的な操作に適した画面をお客様に代わって作成します。

機械メーカーの多くは、これから海外メーカーや海外市場で戦うことが増えてくると思います。そうなるとオペレーターは日本人に限らず、世界中の人が使うようになり、スキルや習熟度の差も大きくなります。従来のように物理スイッチだけですべてに対応するのは難しく、表示・操作パネルのHMI化が必須で、さらに画面表記も多言語化やピクトグラムを使って誰でも直感的に分かるようなものが求められるようになります。当社はグローバルで事業を展開している背景から、多言語化やユニバーサルデザインも得意なので、作画コンサルではそうしたアドバイスやサポートも可能です。

 

シンプルな制御の小型・中型機械のレベルをワンランク上に引き上げる

ーー一口に制御と言っても、大小、緻密さで幅広くあります。どのあたりをターゲットとしているのでしょうか?

半導体製造装置や工作機械、ロボットなどミリ秒単位の制御が必要な領域は狙っていません。シンプルで簡単な制御、例えばインバータ制御や温度制御をするような機械や領域には適しています。

特に最も親和性が高く、採用数も多く、ターゲットとしているのは食品機械関連です。混ぜたり、切ったりをメインに行うような小型・中型の食品機械はインバータで制御し、制御盤も小さめ。物理スイッチも多く使われ、表示器やタッチパネルになっていないものも多くあります。また人手不足対策としてIoTやリモートメンテナンスの機能を追加しようとしても、制御盤内に設置スペースがなかったりします。

それに対しSTC6000シリーズは、制御盤のサイズそのままでタッチパネル化と制御を高度化ができ、さらに遠隔監視などのリモート機能も追加できます。

食品機械以外に、検査装置や近年注目を集めているスマート農業、スマートアグリのような分野に対しても、温度・湿度コントロールや照明・水やりの自動化、タブレット等で遠隔からセキュアに見える化出来るといった利点の提案を強化していきます。

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