製造業・FA各社の経営戦略と取り組み、最新技術・製品情報を各社キーマンに聞く

【福西電機】稼げる市場にシフト、儲かる新事業に挑戦

福西電機は、大阪に本社を置き全国で活動するエレクトロニクスの専門商社。パナソニックグループに属し、電設資材とFA・制御機器や電子機器など産業機器を中心に取り扱い、2023年度の売上目標は860億円。現在の状況を代表取締役社長の堀 久志 氏(写真左)と、執行役員 産機営業本部長の川合 功一 氏(写真右)に聞きました。

規模拡大するエレクトロニクス市場。複合的な提案ができる強みを活かす

ー2023年度の進捗はいかがでしょう?

堀社長  2023年度は通期で860億円(前年比5.0%増)を目標とし、1Qはふた桁伸長で今のところは順調です。コロナ禍が明けて、商業ビルやホテルなどの需要は回復してきており、脱炭素関連でEVの充電インフラ整備の案件も増えています。このままいけば通期目標は達成できると見ています。

ー市場の見通しは?

堀社長  中長期的に見れば、電気の需要はこれからも増えていき、エネルギー関連の市場は拡大していきます。電気の使い道や利用場所は広がっていて、それに合わせて受変電設備の拡充をはじめ、電材需要や電気工事も伸びていくでしょう。

例えば、EV充電器は設置が広がっていて、懸念点だったマンションや集合住宅での設置についても補助金で賄えるようになってきて、誰が設置費用を負担するのかといった問題も解決に向かっています。またカーシェアリングも広がり、カーシェアリングポートへの充電器設置も増えています。

太陽光発電システムも、脱炭素やカーボンニュートラル、GXなどで工場や商業施設、ビル等に自家消費型を設置するケースが増えてきています。

当社の場合、産機営業本部、電材営業本部、ソリューション営業本部、住環境機器営業本部があり、産機営業本部は主に製造業の装置メーカーに向けて機器やデバイスを提案し、電材営業本部は電設資材を商材として電気工事や建設業に提案し、ソリューション営業本部はデベロッパーなど施主に向け、そして住環境機器営業本部は、電材店や住宅メーカーなどに提案活動をしています。同じ電気関連であっても、営業本部によって提案する商材とマーケットが異なります。電気業界の成長に対して複合的に多面的に提案ができるという強みがあり、それを伸ばしていこうと考えています。

デジタル商材の専門部隊を組織化

ー産機営業本部の状況は?

川合本部長  2023年度通期目標は170億円(前年同レベル)に置き、中長期的には2030年に300億円を目指しています。1Qについては半導体業界向けが厳しい傾向ですが、他の業種でカバーできています。

今年度は年間を通じて苦戦が予想されますが、2024年・2025年の新製品開発へのスペックインを目指し、お客様先へのアプローチと提案活動を強化しています。またここ2~3年で人員を大幅に増やしております。我々のビジネスは、知識や経験が求められるので一人前になるまでに時間がかかります、従って早期戦力化に向け人材育成にも力を入れております。来年以降からは、徐々に効果が出ると期待しています。

また組織変更を行い、産機営業本部の直下に「デジタルソリューション部」を作りました。これまでは産業用PCやネットワーク及びセキュリティ機器、モーションコントローラ、画像処理システムといったデジタル商材を提案する部隊がバラバラだったのをひとつの部にまとめ、専門人材が一気通貫でやるという体制にしました。顧客である装置メーカーの開発スピードが加速化しているため、それに対応するには専門組織が不可欠です。確実に効果が出ています。

ユーザー志向にこだわり、最適解の提案力を強化

ーデジタル商材はどこも力を入れており、競争も激しいです

川合本部長  リモートや予知保全など人手不足に対する省人化に関連した商材や、Hubなどのネットワーク機器やセキュリティ対策機器、AIに最適なハイエンドの産業用PC                                            などが好調です。産業用PCはAI対応でないと選ばれないという状況も一部では起きていて、特に画像検査や監視カメラ、顔認証などのアプリケーションではAIへの関心は高まっています。

当社のデジタルソリューションの特長は、取り扱いメーカー数と品数の種類が多いことです。同じ分野であっても複数メーカーの製品を取り扱っています。これによって顧客の要求に合わせて最適な商品を提案することが可能です。

例えば、よく似たスペックの産業用PCどうしであっても、筐体の形状やポートの数・位置など仕様が異なっています。お客様のスペックに対する要望に対して最も合致するものを提供するには単一メーカーのラインナップでは限界があり、複数のメーカーから選べるようにしておくことが必要です。ユーザー志向にこだわりニーズにあったものを提供できる、それが他社との違い、当社の強みになっています。

ー自社都合で標準品を提案するか、お客様のニーズに合ったものを提案できるかの違いですね

川合本部長  はい、その為には常に様々なメーカーとコミュニケーションをとり、新商品状況をいち早く入手し、詳細にわたって違いを調べて提案できることが重要です。お客様と密なるコミュニケーションを取り続け、最適な提案をしていくことがデジタルソリューション部の役割であり、これから更にブラシュアップしてまいります。

ーその他の取り組みとしては

川合本部長  お客様へのアプローチ強化の観点から、今年1月にインターネプコンに出展しました。新規・既存のお客様とじっくり話すことができ、手応えはありました。また会場には我々のお客様も多く出展していて、当社ブースにも寄って頂き、そこから新しいテーマも出てきました。来年も出展する予定です。

またお客様の会社や工場にて、持ち込み展示会やセミナーを6月頃から積極的に開催しています。月2回程度のペースで実施し、お客様からはとても好評です。お客様は展示会やセミナーなどに足を運ぶ時間が取れず、リアル開催を求める声も多くあります。非常に喜ばれておりますし、コロナ禍で数年来途絶えていた皆様との再会も我々にとって非常にうれしい機会であります。

DEI推進室を設置 働きやすい仕事環境の整備に注力

ー昨年パーパスを作りました。効果はいかがですか?

堀社長  「人・技術・情報の架け橋となり、最適解で『福(しあわせ))』あふれる未来をつくる。」これが少しずつ社内に浸透し、多くの社員がパーパスに向けて自らの業務へ積極的に取り組むようになったと感じています。経営陣がトップダウンで決めたものではなく、現場の社員に自ら考えてもらって決めていったので納得感も強くて良かったのだと思います。しっかりと定着するよう、引き続き進めていきます。

またパーパスの「福(しあわせ)あふれる未来」に向けて、ダイバーシティや多様性、働きやすい環境を整備するための専門部署として「DEI推進室」を作りました。これからの時代、今のままでは人が集まらず、採用も難しくなっていきます。時代に合わせて変えていく必要があり、そういう会社になっていかなければなりません。

特に電気業界は昔から女性に人気がなく、結婚や出産などのライフイベントで退職してしまうケースが多くありました。女性がもっと活躍して頑張れる場所にできるようにすること、また女性だけではなく、男性の育休取得アップや介護世代の方など時代に合わせた働きやすい環境を作っていきたいと思っています。

選択と集中、メリハリのある事業運営

ー今後に向けて

川合本部長  産機営業本部は、引き続き顧客の新製品へのスペックインを目指して提案活動を強化していきます。またこれからは、ハードウェアからソフトウェア中心のプリケーション勝負の時代に入っていきますが、ソフトの進化と同様にハードも進化します。双方を理解し、成長する市場への一翼を担っていきたいと考えています。

また2030年まで脱炭素・カーボンニュートラル関連の市場は活況が続くと思います。幅広い商材と幅広いマーケットが当社の強みであり、産機営業本部だけでなく他の営業本部と連携して提案を進めていきます。

堀社長  短期的に見れば山谷ありますが、長期的に見れば当社を取り巻く市場環境は悪くありません。お客様への最適解を提案することが未来につながるので、選択と集中、メリハリをつけて引き続き事業を展開していきます。

https://www.fukunishi.com/