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【オムロン】価値創造企業へ次の一歩 ソリューション強化へ組織再編 営業本部からソリューション営業本部へ

オムロンは、2010年代半ばから新たなコンセプト「i-Automation!」を打ち出し、モノ売りの機器メーカーから顧客の課題解決、ソリューションを提供する価値創造企業への進化を図っています。大手企業を中心にi-Automation!採用企業が着実に増加するなかで、次のステップとしてソリューション提案の組織をこれまでの営業本部からソリューション営業本部に再編し、さらにソリューション提供範囲を中小企業へと広げています。

そんなオムロンのソリューションの取り組みについて、インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー ソリューション営業本部 本部長の伊達勇城 氏に聞きました。

ソリューション提案強化に向けた組織変更

ーー営業本部からソリューション営業本部へ。組織変更の意図と狙いは?

日本の製造業を強くし、製造業大国・日本の復活に貢献したいと考えた時、当社もこれまでと同じようなコンポーネンツ販売だけではなく、お客様が直面している課題を解決する唯一無二のソリューションプロバイダーになる必要があります。

2016年に発表したオートメーションの新コンセプト「i-Automation!」を皮切りにソリューション強化に舵を切り、2022年には脱炭素社会への貢献や作業者の働きがいなど、新たな製造業の課題を解決するためにコンセプトを進化させるなど、多くの取り組みを進めてきました。2023年の4月には、営業組織の名称を「営業本部」から「ソリューション営業本部」へと変更し、名実ともにソリューション提案を加速させています。

i-Automation!をきっかけに課題解決型企業へ変革

ーーコンポ販売からソリューションへ 何が変わったのですか?

i-Automation!をきっかけとして、社内のあらゆるものを変えてきています。

例えばお客様への価値提供について、これまでは社内で商品を企画して製造し、それを販売することで価値を提供してきましたが、いまは価値伝達プロセスとして再構築し、お客様が抱えている課題を出発点として、お客様の実現したい姿、未来像を導き出し、そこに必要な技術やアプリケーション、ソフトウェアを開発・提案するという形になっています。さらに、課題解決に向けた提案と作り込み、立ち上げ・運用・保守の体制も強化し、技術を活かした組織に再編成しています。

具体的には、ソリューション営業本部には最前線でお客様に提案して対応する「フロント営業」、技術に長け、お客様を技術的に支援する「フィールドエンジニア」、お客様に合わせてアプリケーションを作り込む「アプリケーションエンジニア」が在籍し、さらに装置の立上げ・運用・保守などエンジニアリング業務は子会社のオムロンフィールドエンジニアリングが担い、ワンストップで課題解決ができる組織となっています。以前よりもエンジニアの割合を増やし、技術的な相談と解決ができる形に強化しています。

また、ロボットに対する関心や需要も高いことから、4月からはロボットSIer専門の営業部隊も立ち上げました。当社の営業がSIerと同行してお客様を訪問し、提案から見積もりまで一気に行えるようになっています。

企業の垣根を超えた仲間づくりを推進

ーー総合力を強化しているという訳ですね

その通りです。さらに販売店についても、販売店がお客様へ直接提案して元請けとなり、当社が技術サポートとして協力したり、当社が主体となってやりとりする形でも、部品調達は専門家である販売店に一任するなど、ケースによって柔軟に対応しています。

各プレイヤーの強みと商材をうまく役割分担して組み合わせることでより大きな価値の提案が可能になります。それをメーカーと販売店、エンジニアリング会社、SIerが力を合わせ、総力戦で展開しています。

ーー1社だけでは限界があります

ソリューションは1社だけでは難しく、レバレッジも効かないので、パートナー戦略を重要と考えています。例えば、エネルギーマネジメントに取り組む場合、サプライヤーやSIerはもちろん、電力会社などにも声をかけ、当社がコアとなって仲間づくりを進めています。メーカーの垣根を超えて、色々な企業が相乗りしていけるようなステージを構築していけるかがこれからの鍵になります。

先進的なものづくりから中小企業支援まで

ーー具体的にはどんな成果が出ていますか?

例えば、二次電池の製造装置向けの巻線機のアプリケーション開発や、自動車の新機能とそれを実現する機器を製造する自動機の共同開発、最先端2次電池の製造装置など、自動車をはじめあらゆる産業のお客様に対して、高精度化や量産化など新たなものづくりに向けた課題解決に取り組んできました。おかげさまでi-Automation!の採用顧客数は2016年からこれまでにグローバルで3850社に広がり、日本国内でも手応えを感じています。

また、中小企業を底上げして強くするような取り組みにも力を入れています。例えば、石川県の精密プレス加工メーカーの有川製作所の生産現場へのロボット導入とロボットシステムの展示場開設では、地場のSIerである山崎電機と当社が技術的な支援を行って実現し、大きな関心を集めました。

中小企業の強化にはさまざまな角度からのアプローチが必要となり、成功例を作って全国に展開していこうと考えています。すでに全国7支店で中小企業向けの支援を開始しています。さらに、国や自治体、業界団体、大学や高専など学校関連、銀行や金融機関などとも連携し、色々な切り口から中小企業を支援できるよう進めています。

顧客の要望と課題、将来像から最適な解決策を導き出す

ーー今後に向けて

以前はそれぞれのエンドユーザーが持つ豊富な技術的知見を活用することで、最適解を導けることもありましたが、今は多くのメーカーと協力して課題解決する時代です。

多くのメーカーから沢山のソリューションが出ていて、お客様は選ぶのが難しく、複雑になっています。ひとつを選んで実際に取り組んでみても、ひとつのソリューションでできることには限界があったりして、自社にぴったりフィットしなかったりもします。その点でエンドユーザーは困っている、ソリューションも乱立していて提供しているメーカーも疲弊しているというのが現在の状態だと思います。

それに対し当社がやらなければいけないのは、工場を持っているお客様の経営課題とマネジメントの課題、現場の課題の3層にある課題を一つずつ解決していくこと。それはソリューション提供だけでなく、エンジニアの人材育成も含めてお客様の技術部門を強化することがソリューションを示すということだと思っています。モノ売りからコト売りへと進化するには、お客様の将来実現したいこと、今やりたいこと、困りことに対してアンテナを張り、それを必ず解決すること。これを忘れるとすぐにコンポーネンツ販売に戻ってしまうので、そこに十分注意して、日々ソリューションの進化に励んでいきたいと思います。

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