急速に需要が拡大している産業用ロボット。市場の要求に応えるにはロボットメーカー、販売代理店、ロボットSIerともに供給・サポート体制の強化が急務となっています。
三菱電機は、2023年4月に、FAシステム事業本部 機器事業部にロボットとセンサを専門に取り扱う部隊として「ロボット・センサ部」を新設。ロボットシステムに関わる製品の販売から立ち上げ、運用、保全といったライフサイクル全般のサポートを強化しています。三菱電機 FAシステム事業本部 機器事業部 ロボット・センサ部 兼 名古屋製作所ロボット製造部 主幹技師長の武原 純二 氏に、ロボット・センサ部新設の狙いと取り組みについて聞きました。
国内のロボット・センサ営業を1つに集約
ーー2023年4月の組織変更でロボット・センサ部が新設されました
ロボットシステムによる自動化、省人化をしたいというニーズは年々増加し、全国からお問い合わせも多くいただいています。最前線でその相談窓口となるのが全国のロボット・センサの営業担当ですが、これまでは支社のFA部門のなかに、PLCやサーボと並んでロボット・センサの担当部隊がいてお客様をフォローしていました。
それを今回、全国のロボットとセンサの営業部隊をひとつにまとめて「ロボット・センサ部」として独立し一貫組織とし、提案・サポート体制を強化しました。日本国内での拡販を目的としてロボット・センサを専門に取り扱い、エリア別の営業部隊と戦略企画グループ、技術統括グループで構成されています。
情報とノウハウ共有でロボット提案を強化
ーーその狙いは?
ロボットシステムは、単に注文を受けて販売して終わりの商材ではありません。またお客様も、需要も増えています。だからこそ専門的な知識と経験、技術を持ったメンバーがお客様に寄り添いながら、より最適なご提案を行う必要があります。
これからは営業と技術のメンバーが密に連携しながら、組織一体となって全国の多種多様なロボット自動化ノウハウをタイムリーに共有し、お客様への提案力・サービス向上につなげていきます。
ーー特に後者は抜本的な見直しですね
PLCやサーボのお問い合わせの場合、既存のお客様が製品自体の内容のケースが多いですが、ロボットの場合は「自動化・ロボット化したい」という詳細検討が必要な課題をお持ちのお客様も多くいらっしゃいます。その際には色々な引き出しを開けながら最適な提案が求められ、そのためにもノウハウと情報の共有が不可欠になっています。
また、よくヒアリングをしてみると、ロボット単体だけでなく、生産システムの話につながり規模が大きくなることもあります。ロボット単体ではなく、ロボットシステムに関わる様々な製品を通じて最適なご提案ができることが三菱電機の強みと考えております。
地域で閉じているとそのお客様にしか目がいかなくなり、思考もノウハウが広がらず、担当個人にとっても組織にとってももったいない。これからは情報や提案のノウハウを全国で共有し、ロボット・センサ部全体としてお客様の価値に繋がる最適なご提案を目指すことが重要になります。
パートナー連携も拡大
ーーロボット拡販にはSIerなどパートナー連携も重要と思います
パートナーには機器とソフトウェア、SIer、協働ロボットパートナーの4つの枠組みがあり、合計で100社以上と連携しています。2014年頃に比べるとパートナー数は倍以上になっています。今後はパートナーの数を増やすというよりも、各パートナーの特長を活かし、一緒にソリューションを開発し、案件として獲得するための活動に力を入れています。
安心してロボットを使い続けられる仕組み「iQ Care MELFA Support」
ーーロボットは売って終わりのビジネスではありません。運用や保全などサポート面での強化については?
2022年夏から提供を開始したアフターサービス「iQ Care MELFA Support」がお客様から好評をいただいています。
これは当社の産業用ロボット・協働ロボットを新たに購入したお客様だけでなく、すでに現場で稼働させているお客様の両方が使えるアフターサービスで、ロボットコントローラに専用のSDカードを挿すと、モニタリングと点検、保証サービスが受けられるものになっています。
モニタリング機能は、日々、ロボットからデータを収集して状態を見える化でき、異常検知や消耗品の交換時期の予知などもできます。万が一ロボットが停止してしまった場合も早期復旧に向けてバックアップデータを活用できます。点検サービスは、専門のエンジニアが本体内部やコントローラまで細かく点検して最適な状態を保つサポートをし、保証延長サービスでは、標準の無償保証期間を過ぎた後も延長でき、安心して使い続けることができます。
ーーiQ Care MELFA Supportはリモートメンテナンスサービスではない?
現状はオフラインのサービスとして提供しています。ロボットをインターネットに直接つなぐというのは状況的にまだ難しく、オフラインで現場にてモニタリングをしながら故障やメンテナンスを知らせるというサービスになっています。
iQ Care MELFA Supportは提供を開始して1年で、まだ認知度が低く、これから普及させていくサービスです。まずはロボットを使っている企業、これから導入される企業に対して安心して使い続けられるような仕組みとして提案を強化し、使ってもらうことが先決です。将来的にどうするか?については、グループ内外のノウハウを結集し、エンジニアリングサービス会社とも連携しながら検討していきます。
iREXに向けて準備着々 ティーチングボックスを10年ぶりに刷新
ーー11月末には国際ロボット展(iREX)が開催されます。それに向けた新製品などありますか?
5月にはティーチングボックス(ティーチングペンダント)の新製品として「R86TB」を発売しました。ティーチングボックスとしては10年ぶりの刷新になります。
オフラインティーチングやダイレクトティーチングでロボットの教示作業を行うケースも増えていますが、生産技術や保全部門等でロボットの取り扱いに慣れている現場では、いまもティーチングボックスが広く使われています。R86TBは、10.1インチの大画面でたくさんの情報を見やすく表示でき、引き続きハードウェアボタンも搭載し、タッチパネルとハードウェアボタンの両方で操作できます。パソコンを持ち込めない現場でもこれ1台で立ち上げから保守まで対応できます。
iREXに向けてはこれから発表となりますが、ロボットのラインナップ拡充を図っていきます。当社が主なターゲットとしているのは中軽量領域の生産ライン向けです。後工程の搬送やハンドリングで使うようなものも含め、拡充を検討しています。
ライフサイクルへの価値提供に向けデジタル活用を進める
ーー今後に向けて
当社は循環型デジタルエンジニアリング企業として、お客様のライフサイクルへの価値提供を目指し、ロボットをはじめ、デジタル技術の活用を進めています。ソフトウェアも、装置やライン設計の納期短縮に向けたシミュレータ「MELSOFT Gemini」、省人化や品質向上に向けたAIによるデータ分析ソフト「MELSOFT MaiLab」、生産性向上やカーボンフットプリント削減に向けたSCADA「GENESYS 64」などを揃えています。
ロボットシステムについても、装置が立ち上がって終わりではなく、運用や保全や改善、アフターサポートがあります。それらを通じてお客様とつながり続け、次のサイクルにつなげていくことが大切であり、ライフサイクルをお客様と一緒に描けるようにサポートを強化しています。
また11月29日から12月2日まで東京ビッグサイトで行われる国際ロボット展にも出展します。ぜひ三菱電機ブースに足を運んでください。