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【シャボン玉石けん】スマートファクトリー化を通じた製造現場課題の解決

スマートファクトリー推進課課長 山野京亮氏(左)、代表取締役社長 森田隼人氏(右)

製造業では、競争力強化のための生産性や製品品質の向上、熟練者の技術継承、老朽設備の安定稼働など様々な課題が存在します。また、工場では危険な作業も多く、熱中症や労働災害等の様々なリスクがあり、作業員の安全管理は喫緊の課題です。

無添加石けんの製造・販売を行うシャボン玉石けんは、これら製造業が抱える課題解決に向け、スマートファクトリー化の取り組みをしています。狙いや効果について、代表取締役社長の森田隼人氏とスマートファクトリー推進課課長の山野京亮氏に聞きました。

スマートファクトリー化に取り組んだ背景

――取組をはじめられた背景を教えてください

「2025年の崖」と呼ばれる社会課題に対応するため、2021年以降DX人材の育成を進めてきました。活動の中で、九州電力グループのICTソリューションを提供するQsol社からの共同研究の提案を受け、スマートファクトリー化の探求を加速しました。この共同研究は2023年4月に始まり、事業基盤の進化と強化を図る成長戦略の重要な部分として位置づけています。そのため、DX実現とスマートファクトリー化を推進する専門部署を設立し、現在に至っています。

――スマートファクトリーにはどのようなことを期待していますか?

職人技術とデジタルの融合、品質や生産効率の向上などへの期待があります。今まで取得できていなかったデータも収集・活用することで、「より良いものづくり」に素早くリアルタイムにつなげていってもらうことも期待しています。

活動を通じて得られた効果

――これまでの活動でどのような効果を感じていますか?

スマートウォッチを活用して従業員の体調管理を行うことで、適正な水分補給のタイミングを通知するなど、安全管理の面で効果が表れてきている他、生産進捗のリアルタイムな「見える化」もできたことで、現場の各種判断が迅速に行えるようになりました。今後はAIも活用して最適な生産計画を立案するなど、在庫の適正管理にも寄与することを期待しています。また、定量化しにくいですが、会社の中で「新しい事をやる」という雰囲気が広がったことは、活動を通じたうれしい効果になります。

――スマートファクトリー化を進める中で、新たな気づきなどはありましたか?

当初は現場担当者が活用する想定で仕組み作りをしていったのですが、他の部署からも多くのデータ活用ニーズがあったのが発見でした。例えば、生産管理担当者が現場スタッフの作業状況データを確認することにより、適切な人員配置につなげられていることなどが一例として挙げられます。また、室温などの環境データを、品質管理や研究開発の部署が活用するなど、データ活用方法は当初の想定を超えて多岐にわたっており、良い意味で想定していなかった「データの価値」に気が付きました。

――注目もされてきているのではないでしょうか?

中小企業がDXの活動をしているということで、多くの企業から視察依頼があります。先日は愛知県の大手自動車メーカーさんもお越しになりました。食品、鉄鋼など見学企業の業種も幅広いです。DXの必要性はわかっているものの、何をすればよいかわからないという企業も多く、実例や費用対効果の話を聞きたいというニーズがあるようです。注目いただけるということは、消費財メーカーとしては非常にうれしい事です。

今後の課題と展望

――スマートファクトリー化における今後の課題と展望について教えてください

今期はさらに品質向上につなげていきたいです。作っているものが、生活者の方に直接使っていただく消費財になりますので、さらに安心してご利用いただけるように、製造プロセスのデータも紐づけて、全数管理をさらにしっかり進めていく予定です。また、たった1%の出来高の違いが数十個の製品ロスにつながることもあり、職人による蓄積されたノウハウとデータによる管理をしっかり連携させることで、品質に加えて生産性向上にもつなげていきたいです。

固形石けんや液体石けん以外に、パウダータイプの洗顔石けん・シャンプーも飛行機の機内持ち込みができるなどで、根強いファンがいらっしゃいます。また、ハンドソープなどを中心に、ノベルティとしてご利用いただくオリジナルラベルやボトル製品も需要が増え、小ロット生産対応も進めています。この様な「無添加石けん」における幅広い製品群において、需要が高まっています。工場増設も計画しており、人手不足への対応含め、機械化・スマートファクトリー化は欠かせません。中期計画の目標達成に向けて、2024年もスマートファクトリー化に向けたQsol社との共同研究を進めていきます。

当社は「人と環境にやさしい無添加石けん」にこだわり続け、今年で50周年を迎えることができました。スマートファクトリー化の新しい取組を通じ、生産性向上と品質向上を両立し、これからも人と環境にやさしい無添加石けんを提供し続けます。

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