製造業・FA各社の経営戦略と取り組み、最新技術・製品情報を各社キーマンに聞く

【ワゴジャパン】差込みコネクター50周年&ビルディングオートメーションのオープン化推進

FA業界は、2022年の特需、2023年は反動による停滞、2024年は回復が見込まれているが、まだ期待通りの動きにはなっていない様子。それでもコロナ禍を経て、人手不足の深刻化、企業の価値向上に向けて自動化・オートメーションへの関心は高く、投資意欲は工場や製造現場以外にも波及している。

2024年の進捗と市場、取り組みについて、ワゴジャパンの原田 秀人 代表取締役社長に聞いた。

グローバル・日本ともに回復途上

ーー2024年のグローバルの進捗はいかがですか

グローバルは、1−6月は前年並みで推移している。ヨーロッパ市場は3月から落ち込み、そこから低迷が続いている。アメリカは横ばい、中国は厳しい。

2022年半ばに受注のピークを迎え、その影響で2023年も良かったが、当時はやはり実需ではなく、投機的な動きだったようだ。ユーザーや商社が買いだめをした結果、今も彼らが多くの在庫を抱え、そのため受注が厳しくなっている。少しずつ解消はしてきているが、年内はこの状況が続くと見ている。

ーー日本市場はいかがですか

FA、制御機器関連が厳しく、DINレール端子台は落ちてはいないが、基板用コネクタ関連は動きがにぶい。電源も在庫が余っている。

現在、国内の建築業界は案件も多く、部材の値上げも影響し過去最高の売上となっていると聞いている。バブル期から30年が経過し、再開発やリニューアルが進んでいる。コロナ禍で中断や延期していた工事が動き出した影響もある。特にインバウンドを背景にした外資系のリゾートホテルや高級ホテル関連はよく動いているので期待している。

差し込みコネクター50周年&好評のレバー式コネクタ

ーー差込みコネクター50周年です

屋内配線用の差し込みコネクターが今年で発売50周年を迎え、深刻化している人手不足の対策を切り口に、市場を再び掘り返そうとしている。

現在、電気工事の際、差し込みコネクターと圧着スリーブどちらを使っているかのアンケートを行い、回答者には抽選で豪華商品が当たるキャンペーンを行っている。アンケートを通じて、いまも圧着スリーブを使っている人に対して差し込みコネクターのメリットを提案し、再度目を向け、置き換えを狙っている。

また、発売以来好評のレバー式のワンタッチコネクタ「WFRシリーズ」のDIY市場への展開を強化するため、第一弾として8月29日から幕張メッセで行われる「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2024」に出展する。すでに差込みコネクターWFRシリーズは、代理店経由でホームセンターでも販売しているが、売場では他社の類似品が多いのが現状だのほとんどは他社が占めている状況だ。展示会にはホームセンターのバイヤーも多く来場するので、彼らにWAGO独自のレバー式差込コネクタを実際に見てもらってメリットを理解してもらい、間接的に商社の売場での拡大や拡販の支援を行っていく。

ビルの照明制御、小規模店舗のエネルギー計測など新規案件も

ーーその他力を入れる商材は?

電設関連で、照明・ライトのマネジメントソリューションとして「照明制御パッケージ」を日本で提供開始した。照明制御コントローラにソフトウェアをプレインストールした状態で販売し、ユーザーは専門的な技術やプログラミングが不要で購入後に設定するだけでDALIによる照明制御ができるようになっている。

エネルギー関連でも、エネルギーを計測して欲しいという案件が出てきている。あるフランチャイズチェーンから路面店の店舗あたりのエネルギー利用を計測し、その結果をもとに省エネをしたいという話や、あるスーパーマーケットでは節電のために冷蔵ショーケースに照明制御を搭載したいという話が来ている。いずれも小規模なものだが、ニーズを拾うことができている。

一方で、再開発関連で照明制御の採用増加を期待していたが、建築資材の高騰の煽りを受けて伸び悩んでいる。施主もデベロッパーもビルオートメーションへの関心度は高く、当初は計画の中に照明制御も入っていたが、いざ作る段階になって予算オーバーということで照明制御が外され、単なるオンオフ制御に乗り換えられてしまうケースが出てきている。しかしながら将来を見据えた企業ではNET・ZERO達成に向けてDALIを検討いただいている。

電源や産業用スイッチ、ECPなど新商材の紹介

ーーFA関連の浮上に向けては

産業用ネットワークスイッチと高効率電源、電子式サーキットプロテクタ(ECP)の販売強化を進めている。キャンペーンを行っている。

産業用ネットワークスイッチは、ここ何年間かでここ数年でサイバーセキュリティ対策の必要性が高まっていて、マネージドタイプの売り上げが伸びている。8月からスターターキットキャンペーンを行う。関心が急速に高まっており、アンマネージドスイッチは価格競争が激しいので、現在はマネージドスイッチの提案を強化している。

高効率電源は、カーボンニュートラルへの貢献効果は、1台では微々たるものだが、生産ラインなど多く使うところではインパクトがあり、採用や問い合わせも増えている。興味を持ってもらっている。

ECPも近年流行っていて、機械メーカーでの採用が多くなっている。機械式だとトリップしたら制御盤を開けて再起動しなければならないが、電子式であれば遠隔から復旧でき、作業も安全にできる。一次対応を迅速化する目的で導入採用が広がっている。

ビルオートメーションのオープン化を推進

ーービルオートメーションへの取り組みは?

日本のビルは、照明や空調、エレベータなど電気設備メーカーによって囲い込まれていることが多く、オープンになっていない。しかし近年はオープン化へのニーズは強まっており、DALIやBACnet、EnOceanなどオープンに取り組んでいる当社の強みを活かして提案を強化していく。DALIは、当社が日本市場に持ち込み、普及促進に取り組んだ結果、建築業界に認知され、ようやく日本メーカーがDALI対応機器を出してくれるところまで来た。次はBACnet、KNXの認知を広げ、ビルディングオートメーションのオープン化を積極的に推進していく。

景気回復に備えた準備 営業体制を強化

ーー新製品発売の予定は?

WFRシリーズのヒットを受け、レバー式コネクタの提案に力を入れる。配線作業をラクにするツールとしての実績を踏まえてたてに、基板用コネクタの拡販に広げていく。

オートメーション製品としては、コントローラのCC-100シリーズにデュアルコアCPUを搭載し、CANインタフェースに対応したタイプの発売を予定している。CtrlX OS搭載のコントローラは発売を開始し、新しい技術として紹介しながら、今後の展開を検討していく。

オートメーション製品では、デュアルコアCPUを搭載した高性能タイプを順次発売していく。また、CtrlX OSを搭載したコントローラの発売も予定しており、新しい技術として紹介しながら、今後の展開を検討していく。

ーー今後に向けて

今は受注が厳しい時期だが、まもなく半導体需要も戻ってくる見込みなので、良くなった時に備えた準備を進める。コロナ禍によってお客様と会えない時期が長く続いた。営業体制を以前と同レベルまで早く戻し、増えている引き合いを取り逃がさないようにしていく。

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