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【ワゴジャパン】最も早く手軽に電力消費・CO2排出量を減らす方法とは?ポイントは電源の変換効率 カーボンニュートラル用スイッチング電源 WAGO Pro2シリーズ

カーボンニュートラルを実現するには、再生可能エネルギーの導入など電気をつくる側と、ファシリティや生産設備など電気を使う側の両方を取り組む必要があります。電気を使う側は、古くから省エネに取り組んでおり、改善余地は少ないように思えますが、近年の盤用機器の省エネ性能の進化によって更新するだけで大きな効果が得られるものも増えてきています。特にスイッチング電源はその最たるもので、最新モデルでは変換効率が格段に向上しています。

ワゴジャパンのハイエンドモデル「WAGO Pro2」は2020年発売の最新機種で、変換効率は96.3%と高く、機器からの発熱も少なく、カーボンニュートラル実現に最適なスイッチング電源として提案を強化しています。ワゴジャパン プロダクトマネージャー エレクトロニクス 兼 フィールドアプリケーションエンジニアの太田妥展氏に聞きました。

業界トップクラスの電力変換効率96.3%

ーーWAGO Pro2シリーズについて教えてください

WAGO Pro2は、CO2を減らし、カーボンニュートラルを実現するスイッチング電源として2020年に発売しました。

電力変換効率が96.3%と高いのが一番の特長で、他のメーカーのハイグレードモデルのなかでもトップクラスの変換効率となっています。変換効率が高いとAC入力からDCを作る時の電力ロスが少なく電気代の省エネになります。10Aを取り出す時も、変換効率の低いものだとより多くの入力を受けないと10Aは出せず、電気代も高くなります。変換効率の高い電源を使うほどエネルギーコストは削減でき、特に電源は長く使うものなので大きな差になります。

またロスが出るということは熱になってエネルギーが放出されることであり、CO2が増え、盤内温度も高くなって冷却のためのムダな電力も使うことになります。変換効率が良い電源を使えば発熱も少なく、カーボンニュートラルにも効いてきます。

カーボンニュートラル実現のカギは「高効率電源」

ーー欧州はカーボンニュートラルには厳しいですね

温室効果ガスの8割は産業界から排出されていて、欧州主要国では環境規制を強化し国が企業に対して取り組みを義務化しています。日本はまだ各企業に裁量がまかされている面が多く、強制力が弱く、欧州に比べて甘い印象です。日本も大企業ほどカーボンニュートラルに取り組まなければいけないのですが、分かっていてもやれていないのが実態ではないでしょうか。

ーーなぜできていないのでしょうか?

例えば、環境やエネルギー関連の展示会を見ても、カーボンニュートラルに向けたソリューションとして企業が提案しているのは、「エネルギーの見える化をして、どこにどれくらいの電力が使われているかを把握し、それに合わせて改善をしていきましょう」というものが多いです。ユーザー各社はカーボンニュートラルを推進できる即効性のある取り組みを知りたいと思っているのに、その手前の見える化の話ばかりです。これでは実際にどうすれば電力消費を減らせるのか、カーボンニュートラルに近づけるのかの答えを見つけるまでにコストも時間もかかります。そのため進みが遅いのだと思います。

それに対し当社の提案はとてもシンプルで、「まずはいま使っている電源を、変換効率の高いハイエンドモデルに変えましょう」という電源の置き換え提案です。電源はどこの工場でも、どんな機械にも必ず使われている汎用部品です。電源を置き換えるだけで省エネになり、カーボンニュートラルに近づくことができます。これがファーストステップです。見える化からの細かい分析は次のステップでもよいと考えます。極めて当たり前の話ですが、意外とお客様は気づいていなかったり、知らなかったりするので、その提案を加速させていっています。

1台で年間CO2排出量を200kg超削減 使用台数が増えれば効果も増大

ーー一般家庭でエアコンを最新の省エネ型に入れ替えて電気代を節約するようなものですね

考え方は同じだと思います。

電源は業界や設備を問わず、どこにでも使われる汎用部品であり、イニシャルコストは高めでも変換効率が高いものを選べばCO2削減ができ、ランニングコストも安くなり、結果として得になります。しかしながら、設計者の多くはサイズや容量、コストを第一に考え、変換効率については気にされていない方が多いです。

しかし実際の効果を数値で表すと、ローエンドモデルの変換効率は85〜90%前後で、これをWAGO Pro2に置き換えると5~10%効率が上がります。仮に定格容量960Wモデルの場合、変換効率が+5%向上されると1台あたりの消費電力(損失)の差は-55Wとなり、電源1台あたり年間480kWh(55W×24H×12カ月)の節電、約226kgのCO2削減になる計算です。しかも電源はある程度の規模の工場であれば100台くらいは使うので、1台226kg×100台で年間22トンのCO2削減になります。

樹齢80年で23mの巨大なブナの木が1本で吸収するCO2量は1トンと言われ、100台の電源を入れ替えることは、巨大なブナの木を工場内に22本植樹するのと同レベルの取り組みになるのです。

ーー樹齢80年ものの木を20本以上植樹するのと同じ効果とはすごいですね

それだけでなく、導入時のコストは少し高額になりますが、5年から10年使うとランニングコストは毎月1000円、年間で1万円以上の削減効果があります。1台で1万円、100台なら100万円。それを5年、10年と続けて使えば、結果として500万〜1000万円のコストカットができます。

必要に応じて機能拡張 後付け通信モジュール

ーーその他の機能は?

デジタル入力/デジタル出力でのリモート制御ができ、スタンバイモードにしてムダな待機電力を電源単位で停止してより省エネが可能です。例えば、コンベアラインは朝にラインを立ち上げたら終業時間までずっと電源が入ったままです。しかし実際にはアイドルタイムや流れない時間もあり、その際もセンサ等は待機電力を使って稼働を維持します。これだと小さな待機電力がいくつも積み重なってムダが増えていきますが、メインの稼働が止まったらPLCから信号を入れて出力を止めることができ、待機電力の無駄を減らすことができます。

また、本体に通信モジュールを後付けで搭載でき、ネットワーク上でDC側にどれだけの電流が流れているか可視化することができます。

電力監視というと、多くの企業がAC側で電流を測って消費電力量を把握することを行っていますが、それでは全体を把握するだけで、DC側も見ないとどこにムダが発生しているかは分からず、対処もできません。しかしDC側を細かく見ようとすると大量の電流センサが必要となり、これは非現実的です。それに対し、電源に通信モジュールを取り付け、ネットワークに情報を乗せることで、簡単にひとつひとつの電流量を知ることができます。

後付けタイプとなっているのは、あくまで電源を取り替えるだけでCO2排出量の削減、カーボンニュートラル実現という目的が達成できるからであり、通信機能はデータやネットワークを利活用する段階になった時に後から取り付ければいいだけの話。はじめは機能を絞ってコストを下げ、必要となった時にはすぐに機能を足せるように、あえてセパレートタイプにしています。

価値基準の転換期「安くて良い」から「環境にやさしく良い」へ

ーー今後に向けて

欧州をはじめ世界では厳しい環境基準値があり、それをクリアするのは当然として、その上で安くて良いものを作るという考え方が主流となっています。それに対し日本は安くて良いものを作り、その上で環境に優しければもっと良いという考え方が主で、そこに大きな違いがあります。

エンドユーザーの工場設備を設計する場合、電力消費とCO2排出量を減らすことはそのままお客様にとってのメリットになるため、部材のコストが上がっても受け入れてもらえます。しかし半導体製造装置や工作機械、食品製造装置などエンドユーザーに販売する製品の場合、電力消費とCO2排出量が削減できるといっても、それは発注元のお客様ではなく、お客様のお客様であるエンドユーザーの利益であり、部材コストが増えて装置の価格が上がるのは受け入れられないという考え方をする企業がまだ多く存在します。

将来のために地球にやさしい製品の方が良いという考え方は世界で広まっており、特にエンドユーザーが海外になる輸出機械を作っている企業では考え方をアップデートする必要があります。

一方で、カーボンニュートラルに向けて取り組まなければいけないと考えている人・企業は確実に増えています。しかし、何をやれば効果が出るのか、何から始めればいいのか分からないために取り組めていないという企業も多く存在します。

それに対して私たちが提案するのが、変換効率の高いWAGO Pro2への電源の置き換えです。単に変換効率の低い電源から高い電源に変えるだけで誰でも簡単に、大きなコストをかけずに効果を得ることができます。ここで変換効率の重要性に気づいてもらい、次のカーボンニュートラルに向けた施策へのステップにしてもらえればと思っています。

https://www.wago.co.jp