製造業・FA各社の経営戦略と取り組み、最新技術・製品情報を各社キーマンに聞く

【カナデン KANADEN】部門間連携による複合販売を強化

2023年度は売上・利益ともに順調に推移

ーー2023年度の見通しは?

海外経済の減速懸念や、半導体分野を中心とした在庫調整など、不確定要素が多いものの、FAシステムにおける部材不足の改善や、情通・デバイスにおける産業機械、家庭用電気機器向け半導体・デバイスの順調な推移、さらには円安による為替影響もあり利益面で順調に推移する見通しです。

セグメント別では、FAシステムにおいては、主力のコントローラシステムや駆動制御機器を中心に、順調に推移しています。一部で部材不足による長納期化の影響は残っていますが、製造業の自動化や脱炭素化をはじめとする投資需要は継続しており、当期も増収増益を見込んでいます。

ビル設備においては、老朽化に伴う機器更新需要や省エネ需要が継続する一方で、コロナ禍による設備投資時期の見直しや部材不足による長納期化の影響があり、ここ数年は利益面で大変苦戦していましたが、今年度は回復傾向にあります。今年度は電源設備案件の端境期ですが、空調冷熱機器の受注回復もあり、増収増益を見込んでいます。

インフラにおいては、コロナ禍における鉄道事業者の設備投資の延期や見直し等により苦戦が続いていましたが、設備更新需要や官公庁案件も回復基調に転じ、今期は増収増益を見込んでいます。

情通デバイスにおいては、コロナ禍の需要回復によりここ2年程は半導体デバイス分野が好調に推移しています。ただ今年度は、一部で在庫調整の影響が出ていることから売上高は前年並みながらも利益は減益を見込んでいます。

ノウハウ活かしたソリューション創出に注力ーー特に注力した取り組みなど

これまで培ってきた当社の専門的なノウハウを活かしたオリジナルソリューションの創出に力を入れています。標準システムパッケージ技術を用いて、従来に比べ大幅な低価格化を実現した可搬型産業ロボット「KaRy」や、カメラ映像と製造業の収集データ連携による業務効率化を図るビデオマネジメントシステム「FAtis」などお客様の課題解決に貢献するソリューションを提案しています。

2024年度はFAシステム事業を推進

ーー2024年度の市場見通しについて教えてください

経済活動の正常化や雇用・所得環境が改善する中、世界的なインフレ、円安の影響、地政学リスクの顕在化等、景気の先行きはますます不透明感が強まっています。このような事業環境の急激な変化に対応するためにも、後半戦を迎える中期経営計画「ES・C2025 」の基本方針であるSDGsへの取り組みをさらに強化し、持続的な成長を実現していきたいと思います。ただし、まずは2023年度の利益計画達成を第一に、営業利益、経常利益ともに過去最高を更新できるよう最後まで頑張りたいと思います。

今後、少子高齢化が進む日本では、労働人口も減少する中で、自動化のニーズがさらに高まるものと思います。また、日本はモノ作りの国です。当社はモノ作りのお客様にいかにソリューションを提供できるかを第一に考えており、自動化のニーズや脱炭素化などを総合的に考えると、FAシステム事業を一番の強みとしているので、この分野に注力したいと考えています。

もう一つは、同業他社にはない分野であるインフラの交通事業です。鉄道事業者はコロナ禍で業績が悪化し、設備投資も抑えています。新幹線の乗客数はコロナ禍以前に戻っていますが、全体的に見るとピーク時水準には回復していません。そういった背景の中で鉄道事業者は輸送事業だけではなく、エキナカやホテル、レストラン、食品販売等への多角化を図っています。当社が今まで参入していなかった部分にさまざまなソリューションを提供できるチャンスでもあると捉え、鉄道事業者向けのビジネスにも今後注力していきたいと考えています。

デジタルマーケティングや横断的組織、M&Aなど積極的に動く

ーー具体的にどんな取り組みを行っていきますか?

現在当社の取扱商品は三菱電機グループの商品が7割を占めており、残り3割は三菱電機グループ以外の商品です。当社としては、残りの3割を製品サイト等を通じて拡げていきたいという戦略があります。

2021年に開設した製品サイトへの協賛会社は300社まで増え、掲載点数も900点ほどになりました。製品サイトやメールマガジン等を活用したデジタルマーケティングとインサイドセールスの連携が進み、新しいビジネスモデルができつつあります。

また、これまで4つのセグメントでは取引先や部門が固定化しがちでしたが、そこに横串を入れ、横断的にどこでも行ける部隊であるソリューション営業部を創設し、セグメントを横断した部門間連携と複合販売を強化しています。多くのお客様に様々な商材をアプローチでき、徐々に成果になりつつあります。

2023年11月30日、12月1日にはプライベート展示会を実施し、大変多くのお客様に来場いただきました。当社のソリューション提案力や事業領域の広さがよく分かったとのご好評をいただきました。今後も当社の業種横断的なソリューション提案力を体感いただけるイベントを積極的に行っていきます。

また、2023年12月には新たに日本制御エンジニアリングをグループに迎え入れました。電力系統制御技術に強みを持つ同社と当社の知見を融合させ、生産現場における効率化やIoT分野でのシナジー創出を図ります。規模拡大、技術力の強化に向けて今後も積極的にM&Aを検討していきます。

人事制度改革の推進でエンゲージメント向上目指す

ーー組織・社内体制の整備などは?

2024年4月に人事制度を刷新し、その中で自律的なキャリア形成や女性活躍等、いろいろな事柄を変えていきます。会社に対する社員のエンゲージメントが重要だと考え、活躍や貢献に対する評価・報酬をもっと明確にわかりやすい形にする、そういった仕組みづくりを進めています。

カナデンDXを強力に推進

ーー2024年度に向けて

コロナの規制緩和、半導体や部材・部品不足の解消により、営業活動がコロナ禍前に戻ってきました。半導体・デバイスではパワー半導体の供給不足や、メモリーの在庫調整などが続いていますが、2024年前半には解消されることを期待しています。2024年度は、従来から取り組んでいるセグメントを横断した部門間連携、複合販売の強化を図るとともに、「カナデンDX」の推進により、2023年度を上回る業績を目指します。

https://www.kanaden.co.jp/